演技性パーソナリティ障害

演技性パーソナリティ障害 (Histrionic Personality Disorder: HPD)

演技性パーソナリティ障害（HPD）は、自己への注目を過度に求め、感情を誇張して表現するパーソナリティ障害の一種です。まるで舞台役者のように、周囲の関心を惹きつけようとする行動が特徴で、そのために人間関係が不安定になることがあります。

特徴

演技性パーソナリティ障害の人は、以下のような特徴を示すことがあります。

注目の的になることを強く求める: 自分が中心人物でないと満足できず、注目を集めるために大げさな言動をとることがあります。
不適切なほど誘惑的な行動: 性的な魅力を過度にアピールし、場をわきまえない行動をとることがあります。
感情の起伏が激しく、表面的: 感情がコロコロと変わり、その深さが感じられないことがあります。
外見を重視する: 注目を集めるために、服装やメイクなどの外見に過剰な関心を払います。
印象的だが中身のない話し方: 話し方は大げさで劇的ですが、内容に乏しいことがあります。
演劇的な表現: まるで舞台役者のように、感情を誇張して表現します。
被暗示性が高い: 周囲の意見や流行に流されやすく、影響を受けやすい傾向があります。
人間関係を過度に親密に捉える: 知り合いを親友のように呼んだり、会ったばかりの人を下 नामで呼んだりするなど、親密さを誇張することがあります。

これらの特徴は、患者の文化的な背景を考慮して判断される必要があります。また、診断する側も自身のパーソナリティを自覚し、偏見のない観察を心がけることが重要です。

原因

演技性パーソナリティ障害の原因は、完全には解明されていませんが、幼少期の経験が影響していると考えられています。例えば、虐待や親からの愛情不足、自己肯定感の低さなどが原因となることがあります。また、遺伝的な要因も関与している可能性も指摘されています。

診断基準

DSM-5（精神疾患の診断・統計マニュアル第5版）では、演技性パーソナリティ障害の診断基準として、以下の項目のうち5つ以上に該当する必要があります。

1. 自分が注目の的でない状況では楽しくない。
2. 他者との交流において、不適切なほど性的挑発的または誘惑的な行動をとる。
3. 感情の表出が急速に変化し、浅薄である。
4. 注目を引くために、自分の外見を用いる。
5. 話し方が印象的だが、内容がない。
6. 芝居がかった、劇的な感情表現をする。
7. 被暗示的であり、他者や状況に影響されやすい。
8. 対人関係を、実際以上に親密なものとみなす。

鑑別診断

演技性パーソナリティ障害と類似した特徴を持つ他のパーソナリティ障害との鑑別が重要です。

境界性パーソナリティ障害: 衝動性や注目を引こうとする点は共通していますが、自己破壊的な行動や慢性的な空虚感を伴う点が異なります。
反社会性パーソナリティ障害: 衝動性や操作的な行動は共通していますが、感情的な誇張は弱く、反社会的な行動に関わっていることが特徴です。
自己愛性パーソナリティ障害: 優越性を示すことで注目を引こうとしますが、依存的ではなく、自分が特別であるということをより誇張する傾向があります。

パーソナリティ障害の診断は、成人期早期までに症状が現れ、薬物やストレスなど一時的な状態と区別され、臨床的に著しい苦痛や機能障害を呈している必要があります。

治療

演技性パーソナリティ障害の治療は、精神療法が中心となります。 терапииを通して、ありのままの自分を受け入れられるようになり、他者からの注目を過度に求める必要がなくなることを目指します。 терапииに加えて、薬物療法が用いられることもあります。周囲のサポートも重要であり、家族や友人などが患者のありのままの姿を認め、受け入れることが精神安定につながります。

疫学

以前は女性に多いとされていましたが、最近の研究では男女差はないとされています。

参考文献

アメリカ精神医学会、(翻訳)高橋三郎・大野裕・染矢俊幸『DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』（新訂版）医学書院、2004年。ISBN 978-0890420256。

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