濡女子

濡女子（ぬれおなご）

四国や九州地方に伝わる妖怪、濡女子。その姿は、地域によって少しずつ異なっています。

愛媛県宇和地方では、髪が濡れた、洗いざらしのような女性の姿で現れると伝えられています。一方、忽那諸島（怒和島、二神島）では海から現れるとされ、大洲市菅田町では全身びしょ濡れで、体に木の葉をまとっているという言い伝えもあります。長崎県では、壱岐島で海や沼から、対馬南部では雨の降る夜に、全身ずぶ濡れの姿で現れるとされています。

共通しているのは、彼女らが人に笑いかけるという点です。そして、その笑顔に笑い返してしまうと、一生付きまとうと言われています。しかし、愛媛県鬼北町や旧三間町（現・宇和島市）では、「やかましい」と声をかけると消えてしまうという話も伝わっています。

妖怪研究家の間では、濡女子の別名として「針女」という名称も知られています。特に、妖怪漫画家・水木しげる氏の著作では、乱れ髪の女性が通りがかりの男性に笑いかけ、笑い返した男性に取り憑くという記述が見られます。しかし、作家・村上健司氏は、これは水木氏が濡女子の特徴を強調して命名したものと推測しています。水木氏の記述では、取り憑かれた男性の周囲を湿らせ、やがて健康を害して死に至らしめる、という危険性も強調されています。

濡女子が登場する作品

濡女子は、フィクション作品にも登場し、そのイメージはさらに広がっています。

『地獄先生ぬ〜べ〜』では、雨の日に男に笑いかけ、笑い返した男に取り憑く妖怪として描かれています。取り憑かれた男の周囲を湿らせ、やがて健康を害して死に至らしめるという設定に加え、水分を失うと死ぬという設定もあります。しかし、作品内では、信じられないほど不潔でタフな男に取り憑いたことで、コミカルな展開をみせています。

『こじらせ百鬼ドマイナー』では、濡女子の少女・瀬々良木碧が登場します。一族に伝わる説話や「濡女子はいるだけで迷惑がられる」という教えから、極度に謙虚な性格をしていますが、主人公たちとの出会いをきっかけに、少しずつ積極性を身につけていきます。

まとめ

濡女子は、地域によって姿や伝承に違いが見られる、ミステリアスな妖怪です。笑うと取り憑かれるという特徴は共通していますが、その影響は様々で、単に付きまとうだけの場合もあれば、命に関わる危険性もあるとされています。 フィクション作品においても、その特徴的な姿や性質は、様々な解釈で描かれ、読者に新たな魅力を与え続けています。 今後の研究で、さらに詳細な生態や伝承が明らかになる可能性も期待されます。

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