瀬川

瀬川（せがわ）について

瀬川とは、江戸時代に新吉原の遊女、松葉屋半右衛門方にいた遊女の名跡です。享保から天明にかけて、同名を名乗る遊女が9人いたとされています。

特に名高いのは、二代目、四代目、五代目で、中でも宝暦年間に活躍した四代目瀬川は、その美貌と才能で一世を風靡しました。下総の農家の出身でありながら、類まれな才能に恵まれ、三味線、浄瑠璃、笛太鼓、舞踊などの遊芸はもとより、茶の湯、和歌俳諧、碁、双六、蹴鞠などにも秀でていました。さらに、文徴明風の書を能くし、易学にも通じていたという記録が残っています。

四代目瀬川の教養の高さを示すエピソードとして、宝暦5年（1755年）春に、親交のあった丁子屋の遊女、雛鶴が落籍される際に送った文があります。その文面には、「あなたがこの遊郭を離れ、清らかな都へ旅立つことを喜びます。新しい生活は、まるで山に咲く珍しい花のように素晴らしいでしょう。あなたは木、相手の方は土、陰陽の理で結ばれ、共に人生を育んでいくことでしょう。それはまるで万人に養われ、万人に愛されるような、めでたい組み合わせです。」と、易の知識と文才を巧みに用いて、雛鶴の新しい門出を祝っています。この文からも、彼女の豊かな文才が窺えます。

その後、四代目瀬川は御用達の町人、江市屋宗助に落籍されましたが、実は、ある大名の家老が江市屋の名を借りたものという噂も流れました。彼女の美貌と才能は、多くの人を魅了し、様々な噂を生んだようです。

安永4年（1775年）には、五代目瀬川が鳥山検校に落籍され、その際、江戸中で評判となり、戯作が作られるほどでした。このことからも、瀬川という名が、当時の人々にとって特別な存在であったことが伺えます。

瀬川の突出し（初店）の年月は、大田南畝の『俗耳鼓吹』に記録されています。代々の瀬川が高額で落籍されたため、松葉屋は莫大な財産を築いたと伝えられています。

関連作品

五代目瀬川
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』（2025年、NHK大河ドラマ、演：小芝風花）

脚注

瀬川は、その美貌と才能だけでなく、教養と高いコミュニケーション能力で人々を魅了し、江戸時代の遊女文化を象徴する存在でした。彼女たちの活躍は、現代においても様々な形で語り継がれています。

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