瀬川拓男

瀬川拓男

瀬川拓男（せがわ たくお、1929年4月19日 - 1975年12月12日）は、日本の人形劇団「太郎座」の主宰者であり、民話研究家、絵本作家としても知られています。彼は、日本の民話を再話したり、人形劇の脚本や演出を手掛けたりするなど、多岐にわたる活動を展開しました。特に、人形劇を通じて子どもたちに夢と感動を与え、日本の児童文化に大きな影響を与えた人物として評価されています。元妻は劇団員であり、民話研究家、絵本作家の松谷みよ子です。

生涯

満州からの帰国と人形劇との出会い

瀬川拓男は東京で生まれました。1942年、家族とともに満州へ渡り、終戦を現地で迎えます。1946年に帰国し、父の郷里である長野県上田市に落ち着きました。父親の影響で社会主義思想に触れ、青年共産同盟の文化工作隊に参加。1947年、近所の子どもたちを集めて紙芝居や人形劇を上演する活動を始め、これが後の人形劇団「太郎座」の原点となります。その後、複数の人形劇クラブを経て、1952年に東京で人形座を創立。この年に松谷みよ子と出会い、翌年に婚約しました。

松谷みよ子との共同生活と太郎座の設立

1953年、瀬川は人形座を離れ、教育紙芝居研究会に所属。街頭紙芝居グループの指導も行いました。松谷みよ子の結核の再発を機に、彼女の看病に専念。1954年には、街頭紙芝居作家組合の事務局長を務めました。その後、紙芝居の人気が衰退し、テレビに取って代わられる中、1955年に松谷みよ子と結婚。同年12月、「劇団太郎座」を立ち上げ、主宰・運営を担当しました。1956年からは、松谷みよ子と共に民話の採訪を始め、共著で『信濃の民話』、『秋田の民話』を出版しています。

テレビ番組と人形劇の融合

1955年、瀬川はテレビの初仕事として、動く絵話「どじ丸物語」を制作し、NHKで放送されました。以降、テレビ番組の仕事が増え、絵話、影絵、人形劇に加え、NHK教育テレビの「かずとことば」や「理科教室小学校1年生」など、教育番組にも携わりました。テレビ番組制作は、太郎座に財政的な安定をもたらす一方で、団員に大きな負担を強いることにもなりました。1961年、太郎座の第一回本公演として、松谷みよ子作、瀬川拓男脚色の人形劇『竜の子太郎』を上演し、高い評価を得ました。1960年代には、テレビ番組「おはよう!こどもショー」内の「それいけトッピー」のコーナーを担当するなど、テレビと人形劇を融合させた活動を展開しました。

太郎座の活動と解散

1966年、人形劇映画『竜の子太郎』に太郎座が出演。この映画は、親子映画運動の第一作となり、高い評価を得ました。しかし、劇団運営の方針を巡って古くからのメンバーが次々と離れていき、新メンバーとの間で溝が深まるにつれて、松谷みよ子との関係も悪化。1967年に離婚に至ります。離婚後、太郎座はソビエト連邦公演を敢行しますが、赤字公演に終わります。1970年には、太郎座の演劇活動の休止を宣言。1975年、突発性心筋症により46歳で急逝しました。1976年、元妻の松谷みよ子が、二人の子供の代理として有限会社太郎座の解散手続きを行いました。

瀬川拓男の遺産

瀬川拓男は、生涯を通じて日本の民話と人形劇の世界を探求し、多くの作品を世に送り出しました。彼の作品は、子どもたちに豊かな想像力と夢を与え、日本の児童文化の発展に大きく貢献しました。遺稿集や太郎座の記録も出版され、その功績は後世に語り継がれています。代表作には、人形劇『竜の子太郎』や『うぐいす姫』などがあります。

瀬川拓男による太郎座演目

まほうの森（瀬川拓男・作）
瓜盗人（瀬川拓男・作）
ぶす（瀬川拓男・作）
お百姓とくま（瀬川拓男・作/演出）
竜の子太郎（瀬川拓男・脚色）
うぐいす姫（瀬川拓男・作）
竜飛の神の物語（瀬川拓男・作）
たべられた山んば（瀬川拓男・作）
きつねとかわうそ（瀬川拓男・演出）
坪田譲二小品集より：まほう・がまのげいとう・善太と三平（瀬川拓男・脚色）
絵にかいた嫁さま（瀬川拓男・作/演出）
日本のたいこ（瀬川拓男・演出）
糸車の歌（瀬川拓男・演出）
それいけトッピー（瀬川拓男・作）

著書

小説力太郎 田島征三絵 朝日ソノラマ 1970
あかざばんばとガラ 丸木位里,丸木俊絵 太平出版社 1973
どじどじどじ丸 梶山俊夫絵 太平出版社 1973.6
『民話＝変身と抵抗の世界』一声社 1976年
『脚本＝龍の子太郎・うぐいす姫ほか』一声社 1976年

共編著

『信濃の民話』（日本の民話1）信濃の民話編集委員会編、未來社 1957年 - 松谷みよ子との共著
『秋田の民話』（日本の民話10）松谷みよ子共編著、未來社 1958年
『朝鮮の民話』1-3巻 太平出版社、1972年 - 松谷みよ子共著　のち偕成社文庫　
『日本の民話』12巻 角川書店 1973-74年 - 松谷みよ子・清水真弓共著

参考図書

松谷みよ子・曽根喜一・水谷章三・久保進 編『戦後人形劇史の証言-太郎座の記録』 一声社 1982年
『松谷みよ子の本 別冊 松谷みよ子研究資料』講談社 1997年 - 「松谷みよ子年譜」を収録
『松谷みよ子の本 7巻 小説・評論』講談社 1996年 - 「小説・捨てていく話」を収録
『松谷みよ子の本 10巻 エッセイ』講談社 1996年 - 「戦後人形劇史の証言-太郎座の記録」を抄録

関連項目

親子映画

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