田島征三

田島征三（たしま せいぞう）は、1940年生まれの日本の絵本作家、美術家です。彼の作品は、力強いタッチで描かれるのが特徴で、多くの人々に愛されています。双子の兄弟である田島征彦（たじま ゆきひこ）も絵本作家として活躍していますが、苗字の読み方が異なることはよく知られています。本来の読み方は二人とも「たしま」でしたが、先に「たしま」で世に出た征三と区別するため、征彦は「たじま」と名乗るようになったという経緯があります。

大阪府堺市で生まれた田島征三は、幼少期を父の故郷である高知県で過ごしました。土佐高校卒業後、多摩美術大学図案科に進学。大学在学中には、後の代表作となる『しばてん』の原型を制作しています。1964年には初の絵本『ふるやのもり』を出版し、絵本作家としてのキャリアをスタートさせました。

1969年、田島は東京都日の出町に移り住み、ヤギや鶏を飼い、農耕を行うなど自然と密接な生活を送る中で創作活動に取り組みました。同年には『ちからたろう』で、世界絵本原画展「金のりんご賞」を受賞し、国際的にも高い評価を得ます。その後も『ふきまんぶく』で講談社出版文化賞、『とべバッタ』で絵本にっぽん賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しました。

1990年代からは、環境問題にも積極的に取り組み始め、日の出町の広域ゴミ処分場建設反対運動に参加しました。『やまからにげてきた・ゴミをぽいぽい』では、行政による環境破壊を批判しています。また、エッセイ集『絵の中のぼくの村』は映画化され、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞するなど、幅広い分野で才能を発揮しています。

1998年には静岡県伊東市に移住し、木の実や流木を使ったオブジェ制作も開始しました。2009年には、新潟県十日町市に「鉢＆田島征三・絵本と木の実の美術館」をオープン。廃校となった小学校の校舎を再利用したこの美術館は、地域活性化の成功例として注目を集めています。

田島征三は、絵本制作にとどまらず、挿絵、画集、エッセイ集など多岐にわたる作品を発表しています。主な絵本作品には、『ちからたろう』『ふるやのもり』『ふきまんぶく』『とべバッタ』『オオカミのおうさま』などがあります。挿絵では、松谷みよ子の『くもだんなとかえる』、古田足日の『忍術らくだい生』などがあります。また、『土に描く』、『絵の中のぼくの村』といったエッセイ集も出版しています。これらの活動を通して、2021年にはENEOS児童文化賞を受賞しました。

田島征三の作品は、自然への深い愛情と、社会に対する強いメッセージが込められています。彼の力強い表現は、見る人に感動と勇気を与え、子どもから大人まで幅広い層に支持されています。

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