瀬戸市立図書館

瀬戸市立図書館の歴史と概要

瀬戸市立図書館は、愛知県瀬戸市にある公共図書館で、本館は東松山町に、分室としてパルティせとに情報ライブラリーがあります。1970年に建設された本館は老朽化が進んでおり、2016年には施設改修や移転を含めた整備基本構想が策定されました。

開館前の黎明期

瀬戸市は、瀬戸焼で知られる「焼き物の町」として古くから栄え、「瀬戸物」は陶磁器の代名詞となりました。職人の町として発展し、第一次世界大戦時には輸出で活況を呈し、1929年に市制を施行しました。1940年代前半には、愛知県内の各市町村で図書館設置の動きがあり、瀬戸市でも地元紙が図書館設置運動を展開し、市民からの寄贈を呼びかけました。戦時中には前線の兵士からも図書や寄付が寄せられました。

1941年には図書館開設準備委員会が発足しましたが、戦況の悪化とともに運動は停滞しました。しかし、1944年には市が初めて予算を計上し、司書を採用して開館準備を進めました。戦時中のため新刊は少なく、古本を買い集めて蔵書を揃えました。空襲による被害も受けましたが、図書の一部は疎開されました。

蔵所町時代(1945-1952)

1945年7月1日、瀬戸川の蔵所橋正面にあった陶磁器陳列館の2階を転用して図書館が開館しました。陶磁器陳列館は1914年竣工の洋館でした。図書館設置の正式認可は8月7日ですが、終戦直後の8月15日には開館しました。開館時の蔵書数は2,412冊で、愛知県内では7番目の開館でした。当時の瀬戸市には、図書館の他に公会堂と陶磁器陳列館しか文化施設はありませんでした。初代館長の佐橋兼夫は、「軍国主義下で平和的な文化施設が生まれたのは稀有なケース」と述べています。

開館当初は館外貸出に料金と保証金が必要でしたが、後に無料化されました。当初の利用者は月約300人でしたが、徐々に増加し、1946年には月約600人に達しました。利用者の内訳は学生が最も多く、次いで児童を含む無職、会社員などが続きました。
1948年には、陶磁器陳列館の隣にある参考館に移転しました。1950年に図書館法が公布されると、翌年には利用規約が改正され、保証金や貸出料が廃止されました。

複合施設時代(1952-1966)

1952年、深川小学校の空き校舎を利用し、1階を図書館、2階を公民館とする複合施設に移転しました。図書館は4教室分のスペースを使用し、一般閲覧室、特別・児童閲覧室、閉架書庫、館長室に分かれました。この移転で、蔵書数は約11,200冊に増加し、児童や公民館利用者の利用が増えました。1953年には初の専任館長が就任しました。1959年の伊勢湾台風では、浸水被害を受けるなどの被害も出ました。

1950年代には総合会館建設も検討されましたが、公民館と図書館は別施設として建設されることになりました。1965年には蔵書数25,373冊、貸出冊数17,167冊となり、特に児童書がよく読まれました。1969年に瀬戸市中央公民館、1970年には瀬戸市立図書館がそれぞれ新築開館することになりました。

仮館舎時代(1966-1970)

1966年、東松山町にあった東京大学の演習林施設を改修し、図書館の仮館舎として利用しました。この建物は平屋建てで、以前の複合施設とほぼ同じ面積でした。複合施設からの移転後は、立地条件が悪く利用者が半減しました。そのため、新刊の紹介や貸出方法の改善などを行い、1969年には愛知県でもまだ少ないブラウン方式を導入しました。

現行館時代(1970-)

1970年、瀬戸市制40周年記念事業として新図書館が開館しました。国の補助金を受け、延床面積1,220.5m2の建物が建設されました。外壁には北川民次の壁画が設置され、全館に冷暖房が完備されました。開館時の蔵書数は約32,400冊でした。1971年には移動図書館車「せと号」の運行を開始し、サービスを拡充しました。

1970年代には蔵書数が約2倍に増えたため、1981年には書庫と参考室を増築しました。1987年にはコンピュータを導入し、貸出業務を効率化しました。1996年には開館50周年記念誌を発行し、1999年には「図書館基本構想指針」を策定しました。

2000年には改修工事を行い、電算システムの更新、BDSの導入、児童コーナーの拡充などを行いました。2001年にはウェブサイトを開設し、資料検索や予約が可能になりました。2002年には館内端末からの予約システムを導入、ブックスタート事業を開始しました。

2006年には、パルティせとに分室を開設し、貸出サービスを開始しました。2007年には本館を改修し、駐車場を拡大、専用パソコン室を設置しました。2008年には運営を民間業者に委託し、開館時間を延長、定休日を廃止しました。

2016年には施設の改修や移転も視野に入れた整備基本構想が策定されましたが、その後、現施設を継続利用する方針が示されました。

移動図書館

移動図書館は、瀬戸市の北部や東部など図書館サービスが行き届かない地域を補完するために、1971年に運行を開始しました。ピーク時には総貸出冊数の約40%を占めるほど利用されていましたが、2005年に車両の老朽化により運行を終了しました。

特色

大学コンソーシアムせと

2003年、瀬戸市周辺の6大学と「大学コンソーシアムせと」を結び、大学図書館の蔵書を市民が利用できるようになりました。これにより、市民は約223万冊の図書を利用できるようになりました。

地域図書館

2006年からは、小中学校の学校図書館を土日祝日に開放する「地域図書館」活動を行っています。本館で予約した図書の受け取りや返却が可能です。この活動が評価され、2010年には文部科学省の「子どもの読書活動優秀実践図書館」に選ばれました。

視聴覚ライブラリー

1953年に瀬戸市視聴覚ライブラリーが設立され、教育目的のフィルムや映写機材などを保有していました。1988年には図書館に併設されました。

蔵書数・貸出数

2014年度末の蔵書数は約31万冊、貸出冊数は約68万冊でした。瀬戸市立図書館は、人口規模が類似する自治体の中では延床面積が狭く、最も古い図書館ですが、貸出冊数は多い傾向にあります。

利用案内

詳細については、公式サイトをご確認ください。

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