火星の巨人ジョーグ

火星の巨人ジョーグ

『火星の巨人ジョーグ』は、エドガー・ライス・バローズの息子ジョン・コールマン・バローズが1941年に執筆したSFジュブナイル小説で、同名の作品を基にしています。この作品は、アメリカの小説家エドガー・ライス・バローズによって加筆修正され、火星シリーズにおける重要な一篇として位置付けられています。シリーズ全体において、作品番号は92、シリーズ番号はM10です。

作品概要

本作は、火星シリーズの末期にあたる作品で、主人公はジョン・カーター、ヒロインはデジャー・ソリスが務めています。デジャー・ソリスの役割が再び強調されるのは、『火星のプリンセス』以来のことです。しかし、本書に対して贋作疑惑も存在し、日本では一時期、真作であるか否かが疑われました。このため、火星シリーズの研究本『バルスーム』ではリチャード・A・ルポフが本作を取り上げないとしています。しかし、後の合本版や新たな文庫版では、火星シリーズの一部として扱われています。

贋作疑惑と翻訳の違和感

翻訳者である厚木淳は旧版の「訳者あとがき」内で、いくつかの違和感を指摘しています。まず、ヘリウム空軍という呼称が初めて登場し、従来のヘリウム海軍との違いが前面に出ています。また、地球人という表現が頻繁に使われ、従来的な用法とは異なっています。さらには、アルシオの足の数が減少していることも挙げられます。物語は三人称で書かれているため、通常の火星シリーズといった一人称での描写からも逸脱しています。このような点から、物語のスタイルに新たな変化が加わったことが確認されます。

ストーリーの流れ

物語は、火星の都市国家ヘリウムを舞台に展開されます。王女デジャー・ソリスが誘拐され、夫であるジョン・カーターが彼女を救い出すために立ち上がります。カーターは緑色人の盟友であるタルス・タルカス、ヘリウム空軍長官カントス・カンと共に行動し、道中でさまざまな困難に直面します。敵は科学者ラス・サヴァスによって作り出された合成人間ピュー・モーゲルで、彼は自らの手下としてカーターたちを罠にはめることに成功します。その後、カーターが仲間たちと共に反撃を試みる様子が描かれ、物語は緊迫感を増していくのです。

登場人物の紹介

物語のポイントは、中心となる登場人物たちの個性です。

• - ジョン・カーター：南北戦争の南軍大尉で、火星の環境で際立つ運動能力を持つ主人公です。剣術に秀で、勇気をもって数々の冒険に挑みます。
• - デジャー・ソリス：美しいヘリウムの王女で、カーターの妻でもあります。成人した2人の子供が存在するが、彼女はその美しさと勇気で物語を大きく彩ります。
• - タルス・タルカス：カーターの親友でサーク族の族長。忠誠心を持ち、騎馬戦士として活躍します。
• - カントス・カン：ヘリウム空軍の長官で、カーターの信頼できる友人。

終盤の展開

カーターたちは、果敢にもピュー・モーゲルの指導する大白猿の軍団や、全高40メートルにおよぶ巨大な合成人間ジョーグと対峙します。彼らは果たしてヘリウムを救うことができるのか？物語はクライマックスへと向かい、カーターの勇気と知恵が試されます。これらの展開には、理不尽な運命に立ち向かう冒険心が込められており、読者を引き込む魅力があります。

まとめ

本作『火星の巨人ジョーグ』は、元々の火星シリーズの要素を残しつつ、新たなキャラクターやストーリー展開を通じて、独自の世界観を描いています。SFジュブナイルとしての側面も持つこの作品は、火星に生きる登場人物たちの愛情や勇気を通して、読者に新たな感動をもたらすことでしょう。

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