火星シリーズ

エドガー・ライス・バローズ『火星シリーズ』解説

概要

エドガー・ライス・バローズによって創作された『火星シリーズ』は、架空の火星を舞台にしたSF冒険小説シリーズです。1912年、『火星の月の下で』(原題: Under the Moons of Mars)の連載開始を皮切りに、全11巻が発表されました。日本語版は創元SF文庫の合本版が最も信頼できる情報源です。シリーズは、幽体離脱によって火星へ瞬間移動した主人公、ジョン・カーターの冒険を描きます。彼は火星（バルスーム）で、さまざまな異星人種や生物と遭遇し、壮絶な戦いや恋愛を繰り広げます。本作は、ヒロイック・ファンタジーの先駆けとも評され、多くの惑星冒険小説に影響を与えました。バローズはアメリカではターザンシリーズで有名ですが、日本では火星シリーズが先に紹介され、大きな人気を博しました。創元推理文庫（現・創元SF文庫）版の美麗な装丁も、その人気に貢献しました。

ストーリー

シリーズ初期は、ジョン・カーターと火星人王女デジャー・ソリスの出会いとロマンスを中心に展開します。物語は、異星での壮大な冒険と愛の物語を描き、カーターは火星の大元帥という地位にまで上り詰めます。続く巻では、カーターの息子カーソリスや娘ターラらが主人公となり、それぞれ新たな冒険が描かれます。物語は、異星人の文化や生態系、科学技術などを詳細に描写し、独自の世界観を構築しています。また、いくつかの巻では、地球人ユリシーズ・パクストンが主人公となり、火星の科学や文化を垣間見せてくれます。晩年の作品では連作中篇の形式となり、古代火星文明の謎や、未開の土地での冒険などが描かれます。最終巻では、木星を舞台にした冒険が描かれ、物語は幕を閉じます。

火星（バルスーム）の世界

バローズの火星は、乾燥した大地に巨大な運河が張り巡らされ、かつては海があったと考えられる痕跡が残る世界です。大気は人工的に製造されており、重力は地球より弱いため、地球人は超人的な能力を発揮できます。火星人には、地球人に似た赤色人や緑色人の他に、黒色人、白色人、黄色人といった異星人種が存在します。また、多肢や多足の生物など、地球とは異なる独自の生態系が築かれています。火星社会は、独自の言語、文化、科学技術を持ち、各巻でその詳細が明らかになっていきます。物語には、テレパシーや第8光線といった独自の要素が取り入れられ、独自性ある世界観が構築されています。火星の衛星フォボス（サリア）は、特殊な性質を持つ場所として描かれています。

主要人物

ジョン・カーター: 地球人。火星の大元帥。
デジャー・ソリス: ヘリウムの王女。カーターの妻。
カーソリス: ジョン・カーターとデジャー・ソリスの息子。
ターラ: ジョン・カーターとデジャー・ソリスの娘。
* ユリシーズ・パクストン: 第6巻の主人公。地球人。

派生作品

『火星シリーズ』は多くの作家に影響を与え、数々の派生作品やオマージュ作品が生まれました。中には、バローズ風の惑星冒険小説や、シリーズへのパロディ作品も存在します。また、映画化もされており、物語は新たな解釈で描かれています。

まとめ

『火星シリーズ』は、エドガー・ライス・バローズによる創造的な世界観と、冒険とロマンスが織りなす魅力的な物語です。独自の火星設定と登場人物、そして緻密な世界構築は、多くの読者を魅了し続けています。本シリーズは、SF冒険小説史において重要な位置を占める作品であり、現代においても高い評価を受けています。シリーズの持つ魅力と歴史を理解することで、その世界観をより深く楽しむことができるでしょう。

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