火星人の方法

『火星人の方法』（The Martian Way and Other Stories）は、SF界の巨匠アイザック・アシモフが1952年に発表した短編集であり、表題作も同名である。

収録作品

火星人の方法 (The Martian Way)
火星植民地は、長年の努力により資源の自給自足化を進めていたが、水と食料だけは地球からの輸入に頼っていた。しかし、地球との関係が悪化し、水資源の供給が制限される事態となる。地球全体の水量を考えれば、火星への輸出量はごくわずかであるにも関わらず、地球側は供給を渋った。水さえ確保できれば食料生産の道が開ける火星の人々は、驚くべき方法で水の確保に乗り出す。

若い種族 (Youth)
地球の宇宙船が不時着し、唯一脱出できた救命艇に乗っていた二人の生存者は、その惑星の原住民に捕らわれてしまう。その生物は、ある程度の知性を持ち合わせており、天文学者や実業家といった職業もあった。そして、地球人の10倍もの巨体を持つ。彼らを捕らえたのは、その惑星ではまだ若者とみなされる二人組だった。

精神接触 (The Deep)
周囲500光年以内に他の恒星が存在しない孤独な恒星と、その周りを回る唯一の惑星があった。惑星には生命が誕生し、知性も獲得した。長い年月を経て恒星が寿命を迎えようとしたとき、生物たちは惑星の地下エネルギーを求めて深く潜っていった。そして10光年先に若い恒星が通過し、その惑星に知的生命が存在することを知る。彼らは物質転送装置をその惑星へ送り込み、地下の生物たちを移住させる計画を立てる。その目標とされた惑星こそ、我々の住む「地球」だった。

まぬけの餌 (Sucker Bait)
宇宙船「トリプルG」は、惑星「トローアス（通称ジュニア）」へ向かっていた。かつてこの星に移住した人々が謎の病によって全滅した原因を調査するためである。専門家たちが上陸し、様々な角度から調査を行うが、死に至る生物や毒物は発見されなかった。気候も人間が耐えられないほど過酷ではなく、全滅の原因は掴めないままだった。そんな中、記憶機関から派遣された若者が、専門家たちの調査現場に現れては、様々なデータについて質問を繰り返す。彼は、散在していた調査データを統合し、全滅の原因となりうる要素を発見する。

書誌情報

『火星人の方法』、浅倉久志・小尾芙佐訳、ハヤカワ・SF・シリーズ3317、1974年9月
『火星人の方法』、浅倉久志・小尾芙佐訳、ハヤカワ文庫SF492、1982年10月

もう一度検索