火曜日の放火魔事件

火曜日の放火魔事件

1976年11月から1977年2月にかけて、東京都新宿区で連続して発生した放火事件です。この事件は、特に火曜日の未明から明け方にかけて集中して発生したことから、「火曜日の放火魔」と呼ばれ、社会に大きな不安と恐怖を与えました。

事件の概要

1976年11月16日から1977年2月1日までの間、新宿区の繁華街を中心に34件もの放火事件が相次ぎました。犯行の手口は、住宅やビルの郵便受け、壁のポスター、ゴミ箱などにライターで火をつけるというもので、いずれも小規模な火災にとどまることがほとんどでした。

しかし、1977年1月4日には歌舞伎町で7棟が全半焼する大規模な火災が発生し、事態は深刻化しました。毎週火曜日に発生する謎の放火事件として、メディアは連日大きく報道し、「火曜日の怪火」などと呼んで、住民の不安を煽りました。

近隣住民は自警団を組織し、消防団と協力してパトロールを実施。警視庁も異例の捜査本部を設置して、警戒と捜査にあたりました。

犯人の逮捕

1977年2月1日未明、ついに犯人が現行犯逮捕されました。犯人は世田谷区在住の31歳の理容師の男でした。男は母親が経営する理容室で働きながら、月曜日の定休日には新宿区の専門学校で理容技術を学び、講師を務めるほどの腕前でした。

専門学校が終わった後、新宿で飲み歩くのが習慣で、日付が変わる頃から犯行を重ねていたことが判明しました。動機は「ムカムカした気持ちがスッとする」「警察や住民が大騒ぎするのが面白かった」という身勝手なもので、1975年春以降の自宅付近での放火を含め、約40件の放火を自供しました。

事件の波紋

事件の報道は世間に大きな衝撃を与え、ニッポン放送の深夜番組『河野嘉之のオールナイトニッポン』では、事件に怯える深夜の街をレポートするため、放送記者のグループ「ヤング特捜隊」を派遣。その際、犯人が目の前で犯行に及んだため、急遽放火現場からの生中継を実施するという事態も発生しました。この生中継が行われた日が、奇しくも犯人が逮捕された日と同じ1977年2月1日でした。

1978年4月14日、東京地方裁判所は犯人の男に対し、住居侵入・現住建造物放火などの罪で懲役10年の判決を下しました。

模倣犯の出現

犯人逮捕後も、新宿警察署と四谷警察署は模倣犯の発生に警戒を続けました。

逮捕された翌週の火曜日である1977年2月8日未明には、新宿区歌舞伎町で連続して3件の放火事件が発生。新宿警察署は、現場付近にいた世田谷区の中学生を補導しました。中学生は「火曜日の放火魔がつかまったのを新聞で見てかっこいいと思った。次は自分がやって、世間を騒がせてやろうと思った」と供述しました。

同年2月22日未明には、埼玉県富士見市で新築中の住宅2軒が放火される事件が発生。埼玉県警東入間警察署は市内のろう者を緊急逮捕しました。ろう者は手話通訳を通して「東京・新宿で起きた連続放火事件をテレビで見てまねをした」と供述しました。

まとめ

「火曜日の放火魔事件」は、犯人の身勝手な動機によって引き起こされた、社会に大きな不安と恐怖を与えた事件でした。また、逮捕後も模倣犯が現れるなど、事件の影響は大きかったと言えるでしょう。

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