火焔太鼓

火焔太鼓（かえんだいこ）

『火焰太鼓』は、古典落語の演目の一つであり、商売が下手な古道具屋が古びた太鼓を大名に売りに行くという、ユーモラスな物語です。この話は、江戸時代に根を持つ小噺であり、明治末期に初代三遊亭遊三によって一層膨らませられました。その後、五代目古今亭志ん生が昭和初期にアレンジを加え、現代の形に仕立て直しました。

あらすじ

物語の主人公は古道具屋の甚兵衛。彼は商売を営むものの、実際には全くと言っていいほど商売上手ではなく、常にお調子者です。たとえば、利益が出るチャンスがあっても、正直すぎる彼の性格が仇となることが多く、逆に無計画な行動によって困ってしまうこともしばしば。火鉢を売ってしまったあげく、寒さに震えるなど、滑稽な状況が展開します。そんな甚兵衛を支えるのは、彼の機転の利いた賢い妻です。

ある日、甚兵衛は古びた太鼓を仕入れます。しかし、彼の妻はその太鼓を見てまた売れないものを仕入れてきたと、皮肉を言います。甚兵衛は丁稚の定吉にその太鼓をハタキで掃除させるよう指示するのですが、定吉は調子に乗って太鼓を叩いて遊び始めます。その瞬間、音を聞きつけた侍が店に入ってきて、太鼓を屋敷に持参して欲しいと頼みます。侍によると、その太鼓の音に魅了されたとのこと。実は侍は有名な大身の武家である赤井御門守に仕えているのです。

太鼓を持参した甚兵衛は、赤井殿様からその太鼓が「火焔太鼓」という国の宝とも言うべき素晴らしいものであると認められ、最終的には300両で買ってもらうことになります。この時の甚兵衛の驚きと喜び様は見物で、彼は300両を目の前に喜びを隠せずに泣き出してしまうほどです。帰宅した甚兵衛は、妻に良い報告をし、彼女もその事実に驚き、甚兵衛を褒め称えます。

その後、二人は次の仕入れについて相談をし、音の出るものが良いと話し合います。甚兵衛は火の見櫓の半鐘を仕入れようと提案しますが、それに対して妻は「半鐘はいけないよ、おジャンになるから」と反対します。この台詞が物語の最後を飾る面白いサゲとなります。

解説

物語に登場する太鼓は「楽太鼓」であり、雅楽に使われる打楽器として知られています。平たい形状を持ち、垂直に立てて演奏するのが特長です。大きさは様々で、神社や仏閣で使われる小型のものから、3メートルを越える巨大なものまで存在します。

もちろん、サゲの「おジャンになる」という言葉は、事象が途絶えることを指し、火事が消し止められた際に半鐘を一回打つことが由来となっています。さらに、甚兵衛が「もっと太鼓を仕入れよう」と発言し、妻が「欲をかきすぎるとバチが当たる」と諭すシーンも、巧妙な掛詞のひとつです。

バリエーション

五代目志ん生は1957年の『初笑い名人会』での演目で、「新年早々『おジャン』は良くない」とし、サゲを変えた例があります。近年では上方落語でもこの話がアレンジされ、登場人物の口調を芝居がかったものにして演じられています。

このように『火焰太鼓』は、古典落語として多くの人々に楽しまれ、その笑いを通じて多くのアレンジや解釈が施されています。

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