炙甘草湯

炙甘草湯（しゃかんぞうとう）

炙甘草湯は、漢方医学における処方のひとつで、動悸、息切れ、不整脈といった症状の改善に用いられます。別名を「復脈湯」とも言い、その処方の出典は、中国の古典医学書である『傷寒論』に遡ります。

概要

この漢方薬は、主に体力が低下している人、具体的には、貧血気味で顔色が悪く、疲れやすいといった虚弱体質の人に適しています。また、不整脈、動悸、息切れのほか、心臓神経症、心臓弁膜症、バセドウ病に伴う呼吸困難など、心臓や呼吸器系の不調にも効果が期待できます。特に、便秘や乾燥肌、口の渇きといった乾燥性の症状を伴う場合に、その効果を発揮するとされています。

炙甘草湯の大きな特徴は、その名の通り「炙甘草」を使用している点です。炙甘草とは、甘草を особым 加工法によって火であぶったもので、これにより甘草の持つ体力を補強する作用がより一層高まると考えられています。

組成

炙甘草湯は、以下の9つの生薬から構成されています。

炙甘草: 3.0g
人参: 3.0g
桂皮: 3.0g
阿膠: 2.0g
麦門冬: 6.0g
麻子仁: 3.0g
地黄: 6.0g
大棗: 3.0g
生姜: 1.0g

これらの生薬が組み合わさることで、心臓機能を高め、血を補い、体の潤いを保つ効果が期待できます。

適応

炙甘草湯は、以下のような症状や状態に悩む方に適しています。

体力の落ちている人の動悸、息切れ、不整脈
虚弱体質
心臓神経症
心臓弁膜症

用法

通常、成人の場合、1日あたり9.0gの炙甘草湯を2～3回に分けて、食前または食間に経口服用します。ただし、年齢、体重、症状に応じて服用量を調整する必要があります。

副作用

炙甘草湯には、まれに以下のような副作用が現れることがあります。

偽アルドステロン症: 血圧上昇、だるさ、むくみ、体重増加、手足のしびれや痛み、筋肉のぴくつきやふるえ、脱力感など
低カリウム血症
胃腸症状: 胃の不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢など
皮膚症状: 発疹、発赤、かゆみなど

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

注意事項

以下の項目に該当する方は、炙甘草湯の服用に関して特に注意が必要です。

医師の治療を受けている人
妊婦または妊娠の可能性のある人
生後3ヶ月未満の乳児
発疹・かゆみ等、アレルギーの既往歴のある人
1ヶ月以上服用しても症状が改善しない場合は、医師に相談してください。

炙甘草湯は、体質や症状に合った服用が大切です。服用に際しては、必ず医師または薬剤師に相談し、指示に従ってください。

関連項目

* 日本薬局方

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