アクリル繊維

アクリル繊維の概要

アクリル繊維（アクリルせんい）は、主にアクリロニトリルを原料として製造される合成繊維の一種です。これは、溶剤を用いてアクリロニトリルを溶かし、特殊なノズルから押し出して紡糸する「溶液紡糸法」によって作られます。アクリル繊維には、アクリロニトリルと塩化ビニルを6：4の比率で共重合したものもあり、これを「アクリル系繊維」やモダクリルファイバー（Modacrylic Fiber）と呼んで区別しています。また、アクリル樹脂と呼ばれる素材は、メタクリル酸メチルを主成分としており、アクリル繊維とは異なるものです。

特徴

アクリル繊維は、その性質から優れた染色性を持っており、カチオン染料を使って鮮やかに染めることができます。さらに、酸性、アルカリ性の薬品に対して強く、太陽光による劣化や雨水に対して優れた耐候性も兼ね備えています。これらの特性に加えて、アクリル繊維は羊毛に似せて開発されており、ふんわりとした柔らかさが特徴です。主に短繊維（ステープルファイバー）として使用されます。

熱を加えることで縮む性質があるため、縮ませたアクリル繊維と通常のアクリル繊維を混合した「ハイバルキー糸」が多く利用されています。この糸は、セーターなどのニット製品、毛糸、毛布、カーペットなど、さまざまな製品に使用されています。アクリル系繊維は、一般的なアクリル繊維の特徴を持ちながら、特に難燃性に優れているという特色があります。そのため、防炎カーテンなどの難燃性インテリア素材として広く利用されています。また、アパレル以外では、光ファイバーやPAN系炭素繊維といった特殊な用途にも使われています。

生産の歴史と現状

アクリル繊維の工業生産は、1950年にデュポン社によって初めて開始されました。この素材は比較的簡単な技術で生産が可能であり、そのため中国をはじめとする第三国への技術移転が進み、全体の生産量は増加してきています。しかし、日本などの先進国では生産が減少傾向にあり、特に2002年には旭化成が国産技術によるアクリル繊維の生産から撤退しました。これは、ビジネス面でコスト競争が激化したことが影響しています。

2014年の段階で、日本国内で製造される化学繊維の中で、アクリル繊維とアクリル系繊維は約14%を占めています。これからもアクリル繊維は、独自の特性を持つ素材として、さまざまな分野での利用が期待されています。

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