炮製

炮製（ほうせい）

炮製とは、漢方薬の製剤過程において、生薬に対して行われる加工技術の総称です。主な目的は、以下の3点です。

不要な成分の除去: 生薬に含まれる不要な成分や不純物を取り除くことで、薬効を高め、副作用を軽減します。
有効成分の抽出: 生薬に含まれる有効成分を効率的に抽出することで、薬効を最大限に引き出します。
毒性の軽減: 生薬に含まれる毒性成分を中和または除去することで、安全性を高めます。

歴史

炮製の起源は古代中国に遡ります。殷の時代の料理人、伊尹が湯液を作る技術を発明したことが始まりとされています。複数の生薬を陶缶に入れ、水や酒などを加えて煮沸することで、生薬を熟薬に変えるというものでした。

その後、『黄帝内経』や『神農本草経』といった医学書・本草書にも炮製のための様々な方法が取り上げられるようになりました。後漢時代の張機が著した『傷寒雑病論』では、炮製が特に重視され、具体的な方法が詳細に記述されています。

南朝宋の雷斅は、炮製を扱った専門書『雷公炮炙論』を著し、薬材の性質と炮製方法を体系的に関連付けました。宋代には、技術の進歩により新たな炮製方法も生まれ、従来の技術も革新されました。

明代には、繆希雍が『炮炙大法』を著し、炮製の方法を整理・体系化しました。彼の提唱した「炮製十七条」は、後世に大きな影響を与えました。

具体的な方法

炮製には、様々な方法があります。『傷寒雑病論』には、以下のような方法が記述されています。

炮: 強火で炒り膨張させる
炙: 炒りながら酒や蜜などの媒液を染み込ませる
熬: 炒りながら水分を乾燥させる
煮: 水を加えて煮沸する
酒洗: 酒で洗う
去腥: 生臭さを除去する
去鹹: 塩辛さを除去する
その他: 節や芯、ぬめり、表皮の突起などを除去する方法

『雷公炮炙論』には、さらに多くの方法が紹介されています。

炒: 生薬を撹拌しながら炒める
煨: 薬剤が入っている湿られた紙袋を灰の中で熱して蒸す
煅: 薬材を火中にいれて脆くする
飛: 粉末を水中に沈めて、比重の重い不純物を取り除く
度: 薬材を切断して、適切な長さにする
* その他: 伏、摋、㬠（曬）、曝など

これらの方法を組み合わせることで、生薬の性質や目的に応じた最適な炮製を行うことができます。

発展

炮製は、時代とともに発展してきました。宋代には、醋焠（鉱物系の薬材に対して加熱と酢浸を繰り返す）などの新たな方法が生まれました。また、煮る液体を酒や蜜、酢などに変えたり、蒸す際に黄精を用いるなど、様々な工夫が凝らされるようになりました。

現代においても、炮製は漢方薬の品質を左右する重要な技術として受け継がれています。科学的な研究も進められており、炮製のメカニズムや効果が解明されつつあります。これにより、より安全で効果的な漢方薬の開発が期待されています。

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