無伴奏チェロ組曲

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ：無伴奏チェロ組曲

ヨハン・ゼバスティアン・バッハの『無伴奏チェロ組曲』（Suites á Violoncello Solo senza Basso）は、チェロ独奏のために作曲された6つの組曲から構成されています。これらの作品は、バッハの作品の中でも特に高く評価され、チェロ音楽の重要なレパートリーとして、今日まで世界中のチェリストに演奏されています。

組曲の構成

各組曲は、以下の舞曲形式で構成されています。

1. 前奏曲（プレリュード）：各組曲の冒頭を飾る、自由な形式の楽曲。
2. アルマンド：ドイツ起源の緩やかな舞曲。
3. クーラント：フランスまたはイタリア起源の、活発な舞曲。
4. サラバンド：スペイン起源の、緩やかな舞曲。
5. メヌエット/ブーレ/ガヴォット：組曲によって異なる、中庸なテンポの舞曲。メヌエットは優雅で、ブーレは軽快、ガヴォットは少しリズミカルな印象。
6. ジーグ：軽快で速いテンポの舞曲。

各組曲の詳細

第1番 ト長調 BWV1007
前奏曲：4分の4拍子。クロイツェルの練習曲にも引用される。
アルマンド：2分の2拍子。
クーラント：4分の3拍子。
サラバンド：4分の3拍子。
メヌエット I/II：4分の3拍子。
ジーグ：8分の6拍子。
第2番 ニ短調 BWV1008
前奏曲：4分の3拍子。
アルマンド：4分の4拍子。
クーラント：4分の3拍子。
サラバンド：4分の3拍子。
メヌエット I/II：4分の3拍子。
ジーグ：8分の3拍子。
第3番 ハ長調 BWV1009
前奏曲：4分の3拍子。
アルマンド：4分の4拍子。
クーラント：4分の3拍子。
サラバンド：4分の3拍子。
ブーレ I/II：2分の2拍子。
ジーグ：8分の3拍子。
第4番 変ホ長調 BWV1010
前奏曲：2分の2拍子。
アルマンド：2分の2拍子。
クーラント：4分の3拍子。
サラバンド：4分の3拍子。
ブーレ I/II：2分の2拍子。
ジーグ：8分の12拍子。
第5番 ハ短調 BWV1011
この組曲は、スコルダトゥーラという特殊な調弦法を用いて演奏されます。A線をGに下げることで、低音域での演奏を可能にしています。
前奏曲：2分の2拍子と8分の3拍子が組み合わさった、フランス風序曲の様式。
アルマンド：2分の2拍子。
クーラント：2分の3拍子。
サラバンド：4分の3拍子。
ガヴォット I/II：2分の2拍子。
ジーグ：8分の3拍子。
第6番 ニ長調 BWV1012
この組曲は、5弦の楽器のために書かれ、高音域を多用。
前奏曲：8分の12拍子。フォルテとピアノの指示があるのが特徴的。
アルマンド：4分の4拍子。
クーラント：4分の3拍子。
サラバンド：2分の3拍子。
ガヴォット I/II：2分の2拍子。
ジーグ：8分の6拍子。

歴史的背景

作曲年代は明確ではありませんが、1717年から1723年のケーテン時代に書かれたと考えられています。クリスティアン・フェルディナント・アーベルという宮廷チェリストのために作曲されたという説や、小型のチェロ（ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ）のために書かれたという説もあります。バッハの妻、アンナ・マクダレーナによる写譜が残されており、これは長らく自筆譜とされていました。

再発見と評価

バッハの死後、これらの組曲は練習曲として扱われ、長い間忘れ去られていました。しかし、20世紀初頭にパブロ・カザルスによって再発見され、その芸術的価値が見直されました。現在では、チェリストにとって必須のレパートリーであり、バッハの作品の中でも特に重要なものの一つとして広く認知されています。

他楽器への編曲

無伴奏チェロ組曲は、チェロ以外の楽器（ヴァイオリン、ヴィオラ、ギター、マンドリンなど）のために編曲され、演奏されることも多く、その普遍的な魅力を示しています。

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