無害通航

無害通航（むがいつうこう）

無害通航とは、外国の船舶が沿岸国の領海に入って、安全を害することなく航行する権利を指します。この権利は国際海洋法において決められており、沿岸国は自国の領海の平和と秩序を保つために、事前の通告なしに外国船舶が通航することを許可しています。ただし、無害通航と言われる権利を行使するには、他国の安全や秩序を乱す行為は受け入れられません。

無害通航権の歴史的背景

この制度の起源は、1840年代にさかのぼり、重商主義から自由貿易主義への転換に伴って国際法上での無害通航権が成立しました。それまでの時代では、外国船舶は沿岸国の許可に基づいて無害通過が認められていただけでした。しかし19世紀に入ると地域主権の原則を基に、全ての船舶に無害通航の権利が認められるようになりました。

無害通航の条件

無害通航は1958年の領海条約第14条4項において「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しないこと」に基づく航行として定義されました。1982年には国連海洋法条約でこの定義が引き継がれました。無害と見なされない行為は具体的に列挙されており、具体的に取り扱いが明確化されています。

国際法に基づく無害通航の状況

国連海洋法条約第18条では、無害通航を「領海の継続的かつ迅速な通過」と定義しています。そのため外国船舶が無害通航権を行使する場合、不審な行動をとることは通常認められていません。通航上の問題が生じた場合、沿岸国は国内法に基づいて適切に規制を行うことができ、もし無害でない行為が行われた場合には、必要な措置を講じることが認められています。

無害の基準

1949年のコルフ海峡事件においては、軍艦が領海を航行する際の無害性についての基準が議論されました。軍艦が行う行動が枠に当てはまるかどうかが評価され、その際の目的に基づいて通行の適切性が判断されています。1958年以降、無害かどうかを判断する際に具体的行為が重視され、船舶の種類も判断材料にされるようになりました。

沿岸国の権限

沿岸国は外国船舶に対して、航行の安全や資源保護、汚染防止などのために法律を制定する権限がありますが、国際基準を超える厳しい規制を課すことはできません。通航の際に国際法を遵守しなければならなく、沿岸国は自らの権利を適切に行使することが求められます。

軍艦の無害通航

軍艦に関しては、無害通航権について統一的な解釈が存在しないため、国によって基準が異なります。アメリカや日本などの一部の国は無害通航権を認めていますが、その他の国では事前の通知や許可が求められることもあります。1989年にはアメリカとソ連が共同声明を発表し、国際法に基づく無害通航権の統一解釈を示しました。

まとめ

無害通航は国際的に認められた権利であり、沿岸国の領海において外国船舶の通過を可能にする重要な制度です。しかし、この権利の行使は、他国への影響を考慮しながら行われるべきであり、国際法に基づき明確に定義され、保護されています。国際的な法制度の枠内で、無害通航が適切に運用されることが求められます。

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