無弋爰剣

無弋爰剣（むよくえんけん）

無弋爰剣（生没年不詳）は、中国の春秋戦国時代に活躍した羌族の首領であり、その名は歴史に深く刻まれています。「無弋」という言葉は羌族の言語で「奴隷」を意味するとされ、彼の出自を示唆しています。

生涯

無弋爰剣は、元々は秦の厲共公によって捕らえられ、奴隷の身となりました。彼がどの戎族に属していたかは定かではありませんが、戎族の一員であったことは確実視されています。奴隷の身から脱出した後、秦の追跡を逃れるため、岩窟に身を隠しました。この時、秦が焼き殺そうと試みましたが、虎の影が現れて火を覆い、奇跡的に生き延びたという伝説が残っています。

岩窟から脱出した無弋爰剣は、鼻を削がれた女性と出会い、夫婦となりました。彼女は容貌を恥じ、髪で顔を隠していたと伝えられています。この風習が羌族の女性たちの間に広まったとされています。夫婦は共に逃れ、三河（黄河、賜支河、湟河）の地へと辿り着きました。

無弋爰剣が焼き殺されなかったという奇跡を知った羌族の人々は、彼を畏敬の念を持って迎え入れ、首領として推戴しました。河湟地域は穀物の生産が少ない土地でしたが、多くの野生動物が生息していました。そのため、羌族は狩猟を主な生業としていましたが、無弋爰剣は彼らに農耕と牧畜を教え、生活の安定をもたらしました。この功績により、無弋爰剣は羌族から一層敬われるようになり、彼の元には多くの人々が集まり、その勢力は拡大していきました。

無弋爰剣の物語は、『後漢書』西羌伝に記録されており、彼の足跡を辿ることができます。

参考資料

* 『後漢書』西羌伝

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