無敵囲い

無敵囲い：初心者を魅了する、しかし脆い城

無敵囲いとは、将棋において3手という驚異的な速さで完成する囲いです。5八飛、6八銀、4八銀と駒を配置するだけで完成するため、初心者にとって最初の到達点となる囲いとして知られています。一見すると、玉の周りを銀が固めているように見え、ある程度の守備力は備えているように思えます。しかし、その実態は攻守ともに不完全な、脆い城と言えるでしょう。

守備の弱点

無敵囲いの最大の弱点は、守備の脆弱性です。銀が飛車の利きを阻害しているため、飛車の攻撃力は低下しています。さらに、2筋と8筋の歩が浮いているため、敵からの攻撃に対して非常に弱い状態です。将棋の格言である「居玉は避けよ」「玉飛接近すべからず」にも反しており、攻め込まれやすい配置と言えます。

攻撃力の不足

攻撃力に関しても、無敵囲いは大きな欠点があります。囲いが完成した時点では、攻撃の手段が限られています。攻勢に出るためには、まず囲いを強化したり、他の戦法に発展させたりする必要があります。そのため、積極的に攻めることが難しいのが現状です。

発展性：潜在能力を秘めた囲い

無敵囲いは、完成形としては劣るものの、そこからより高度な戦法や囲いへと発展させることができるという点で、初心者にとって貴重な経験となります。カニカニ銀、ツノ銀中飛車、風車といった戦法や、金美濃、木村美濃、右矢倉といった囲いに派生させることが可能です。これらの戦法や囲いを学ぶための最初のステップとして、無敵囲いは重要な役割を果たします。

名称の由来：皮肉と経験

「無敵囲い」という名称の由来は、残念ながら明確には分かっていません。将棋漫画『ハチワンダイバー』では、初心者であるキャラクターが無敵囲いを用いて苦戦するものの、兄からのアドバイスでカニカニ銀に発展させ、勝利を収めるエピソードが登場します。これは、初心者にとって無敵囲いが「愛のこもった皮肉」であることを示唆していると言えるでしょう。また、プロ棋士である今泉健司氏も、幼少期に無敵囲いを指していたと述べています。

プロ棋士との関わり

羽生善治名人の著書『羽生善治のみるみる強くなる将棋 序盤の指し方 入門』では、「初心者囲い」として無敵囲いが紹介されています。羽生善治氏自身、そして佐藤康光九段も、将棋を始めた頃に無敵囲いを指していたと語っています。これは、無敵囲いが初心者にとって普遍的な経験であり、将棋の学習過程において重要な役割を果たしていることを示しています。

オンライン将棋ゲームでの扱い

オンライン将棋ゲーム「将棋ウォーズ」では、無敵囲いは正式な囲いとして登録されています。これは、無敵囲いが初心者にとって重要な囲いであることを裏付ける証拠と言えるでしょう。

まとめ：通過点としての価値

無敵囲いは、完成形としては脆弱な囲いですが、初心者にとって将棋を学ぶ上で重要な通過点となる囲いです。その簡潔さゆえに、初級者が最初に辿り着く囲いとして、そしてより高度な戦法や囲いへと繋がるステップとして、無敵囲いは将棋界において独特の存在感を持ち続けています。 「最強囲い」と呼ばれることもある一方で、その脆さは初心者にとって学びの機会を与えてくれると言えるでしょう。

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