居玉

居玉：初期配置から動かない玉将の戦法

将棋において、玉将が初期配置である5九（先手）または5一（後手）から最後まで動かない状態を「居玉（いぎょく）」といいます。一般的に、玉将は早期に安全な位置へ移動させ、金や銀などで囲って守ることが基本とされています。そのため、居玉は非常に危険な状態とされ、「居玉は避けよ」という格言もあるほどです。

居玉の危険性と状況

居玉は、角行や飛車による王手、特に王手飛車の危険に常にさらされます。特に、早繰り銀や早石田などの急戦では、玉を囲う余裕がない状況で居玉になるケースがあり、非常に危険です。しかし、居玉は常に悪手というわけではなく、いくつかの状況下で採用されることがあります。

例えば、駒組みの状況から、初期位置が最も安全だと判断される場合、居玉囲いを形成することもあります。また、奇襲戦法の一環として、あえて居玉を維持し、相手の攻めを誘って逆転を狙う戦術もあります。相手の予想外の行動によって、逆に相手を窮地に陥れる戦略として用いられる場合もあるのです。

居玉は、相手の攻めを誘うことで、相手の戦術の予測を難しくする効果も持ちます。相手の攻めが甘ければ、その隙を突いて反撃に転じることも可能です。しかし、常に高いリスクを伴うため、熟練した棋士でなければ容易に実行できる戦法ではありません。

プロ棋士による居玉の採用例

プロ棋士の対局においても、居玉を採用するケースは少なくありません。特に、急戦や奇襲戦法が中心となる対局では、居玉を戦略的に利用することがあります。多くの場合、居玉のまま早期に激しい戦いが展開され、短手数で決着することも多いです。ただし、中には100手以上の長丁場になることもあります。

様々な棋士が居玉を採用しており、その戦術は様々です。角換わりや矢倉、振り飛車など、様々な戦型で居玉が用いられ、勝敗も分かれています。居玉を採用した棋士の中には、勝利した者もいれば敗北した者もいます。これは、居玉が常に危険な状態にあることを示しており、その成否は棋士の力量と、その時の状況に大きく左右されることを意味します。

例えば、藤井聡太棋士は、居玉で勝利した例が複数あります。また、豊島将之棋士は、居玉のまま長手数にわたる激戦を繰り広げた例もあります。これらの例からもわかるように、居玉はプロ棋士にとっても、戦略的に重要な選択肢の一つであると言えるでしょう。

居玉戦法と関連戦型

居玉は、特定の戦法と相性が良いと言われています。例えば、藤井システム、早石田、新・石田流、鬼殺し、4四歩パックマンなどの奇襲戦法、カニカニ銀、早繰り銀、英春流、横歩取り、ノーガード戦法、塚田スペシャル、相掛かりなど、様々な戦型で居玉が用いられます。これらの戦法では、相手の予想外の展開に持ち込むことで、優位に立つことを狙います。

特に、横歩取りや相掛かりなど、飛車先交換型では、居玉を採用するケースが多いです。また、無敵囲いも、元々は居玉を前提とした囲い方です。

居玉は、必ずしも悪手ではありません。状況に応じて適切に活用すれば、勝利への道筋を開くことができる可能性を秘めた戦法です。しかし、そのリスクの高さを常に認識し、慎重に判断することが重要です。

まとめ

居玉は、危険性と可能性を併せ持つ、非常に特殊な戦法です。その成否は、棋士の深い洞察力と、状況判断力、そして高い技術に依存します。居玉の妙技を極めることは、将棋の奥深さを知る上で重要な要素となるでしょう。

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