無法松の一生

無法松の一生

『無法松の一生』（むほうまつのいっしょう）は、岩下俊作による小説で、福岡県小倉（現在の北九州市）を舞台にした感動的な物語です。物語は、粗野で勇ましい人力車夫・富島松五郎を中心に展開し、彼が親しい友人となった陸軍大尉・吉岡の未亡人である良子とその幼い息子・敏雄との交流が描かれています。

小説の出版と評価

この作品は1938年に『富島松五郎伝』のタイトルで脱稿され、翌年には『改造』の懸賞小説に応募し佳作入選を果たしました。その後、1939年には『九州文学』に掲載され、中央文壇の注目を浴びました。1940年には『オール讀物』に掲載され、第10、11回の直木賞候補となりますが、残念ながら受賞には至りませんでした。

映画化とその影響

作品は1943年に大映京都で映画化され、特に伊丹万作が脚色（脚本）を手掛けた版が有名です。伊丹は当初『いい奴』というタイトルを考えていましたが、興行面から『無法松の一生』に改められました。この改題に対して、原作者の岩下は長年難色を示していましたが、時が経つにつれて世間の支持を受け入れることになります。一方、今日でも多くの文学資料においては元のタイトル『富島松五郎伝』のままで紹介されています。

あらすじ

物語は明治30年の小倉から始まります。松五郎は博奕が原因で故郷を追われた過去を持つ人力車夫です。彼は地元の撃剣の先生との喧嘩に絡み、怪我をした少年・敏雄を助けることで吉岡家と関わりを持つようになります。しかし、吉岡大尉は演習中の風邪による急死で思いも寄らない結末を迎えます。

敏雄の母である良子は、敏雄が気が弱いことを心配し、松五郎に支えを求めます。松五郎は献身的に良子と敏雄に寄り添い、二人の生活を支えます。やがて敏雄は中学校に進学し、松五郎の影響を受けつつ成長していきますが、その間に徐々に疎遠になっていきます。物語は、敏雄が松五郎と過ごした思い出を胸に抱えつつ成長する姿と、松五郎の孤独な最後を描き出します。

舞台と音楽

1942年には初めて舞台化され、以降も様々な劇団によって数多くの上演が行われています。特に、宝塚歌劇団による舞台や、さまざまな演者による演劇形式での再演が評価されています。また、村田英雄が歌う「無法松の一生」という楽曲も有名であり、彼の名曲となっています。

まとめ

『無法松の一生』は、その物語の力強さと人間の絆をテーマにした作品として広く親しまれています。映画や舞台、楽曲など、さまざまな形で文化に影響を与え続けており、多くの人々の心をつかんでやみません。1959年には北九州市小倉区に「無法松の碑」が建てられ、この物語がもたらした多くの感動を永遠に伝えるシンボルとなっています。

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