無限の玄/風下の朱

概要

『無限の玄/風下の朱』は、古谷田奈月による日本の中編小説で、2017年から2018年にかけて発表された二つの物語を収録した作品です。『無限の玄』は2017年に『早稲田文学増刊 女性号』に掲載され、その後『風下の朱』が2018年の『早稲田文学 2018年初夏号』に発表されました。両作品ともに高い評価を受け、特に『無限の玄』は第31回三島由紀夫賞を受賞し、『風下の朱』は第159回芥川龍之介賞の候補作として位置づけられます。二つの物語は後に一冊の単行本『無限の玄/風下の朱』として筑摩書房から出版され、装画は影島晋平による『するどい角度2』、装丁は名久井直子によるものです。また、本書は第40回野間文芸新人賞にもノミネートされるなど、文壇での注目を集めています。

あらすじ

無限の玄

物語は、血縁で結ばれた5人からなるブルーグラスバンド「百弦」のメンバーを中心に描かれます。その中でも中心となるのは、語り手でもある次男の桂です。ある日、桂の父である玄が自宅のリビングで倒れて死亡しているのが発見されます。その衝撃的な出来事の後、桂は時間が経つにつれて、縁側に腰かけて庭を眺める父の姿に再び出会います。この不可解な現象は、桂の心の中にある複雑な感情や家族との関係について強い影響を与えます。

風下の朱

梓は、中学・高校時代にソフトボールに情熱を注いでいましたが、明水大学に進学し、女性だけの野球部に参加することになります。部長の侑希美に誘われ入部した梓は、野球部の活動を通じて新たな仲間たちと出会うことになります。彼女たちは互いに助け合いながら成長し、特に侑希美は健康であることが大切であると強調します。このメッセージは、女性たちの自己認識や挑戦のあり方に重要な意味を持つのです。

登場人物

無限の玄

• - 玄: 桂の父で、物語の中心的な存在。
• - 桂: 玄の次男で、語り手。家族の葛藤を内面から語る。
• - 律: 玄の長男。家族の中での役割を持つ。
• - 喬: 律の叔父で、家族の絆を象徴するキャラクター。
• - 千尋: 喬の息子。家族との関係で葛藤を抱える。

風下の朱

• - 侑希美: 明水大学野球部の部長で、健康を重視するリーダー。
• - 梓: 明水大学野球部のメンバー。新しい挑戦に奮闘する。
• - 杏奈: 野球部の仲間で、梓を支える存在。
• - 潤子: 明水大学野球部の部員。女性同士の友情を大切にする。

書評

『無限の玄』について、小説家の辻原登は作品の独自性を高く評価し、主人公の無垢さや詩的な魂が物語全体に影響を及ぼしていると賞賛しています。また、平野啓一郎は、著者のテーマが過去作に比べて格段に洗練されている点に言及しています。

『風下の朱』に関しては、書評家の豊崎由美は、フェミニズム運動の展開を示唆する明確で爽やかなラストに注目し、産経新聞では計算された人物配置と物語の展開が高度であるとしつつ、形式的すぎるとの意見も見られます。

参考文献

古谷田奈月の『無限の玄/風下の朱』は、筑摩書房から2018年に出版され、一般的なテーマを人物の成長や人間関係に深く掘り下げており、多くの読者にとって印象深い作品となっています。

もう一度検索