照井堰用水

照井堰用水について

照井堰用水（てるいぜきようすい）は、岩手県南部の磐井川上流に位置する厳美渓を源流とする、総延長64キロメートルに及ぶ三本の人工河川の総称です。これらの水路は、一関市と平泉町を潤し、豊かな穀倉地帯を支えています。

歴史

照井堰用水の歴史は古く、平安時代末期に藤原秀衡の家臣であった照井太郎高春によって灌漑を目的として開削が始まりました。その後、子孫の照井太郎高安によって完成されました。その偉業を称え、照井氏の姓を冠して「照井堰」と名付けられました。

1189年（文治5年）: 照井太郎高春が開削に着手
1493年（明応2年）: 照井太郎高安が開削を完了
1494年（明応3年）: 五串村と猪岡村の両岸に穴堰を開き、南猪岡村、上黒沢村、中黒沢村、下黒沢村、一関村、三関村へ水を供給する水路（現在の大江堰）を開削

江戸時代に入ると、一関藩によって更なる整備が行われました。

1643年（寛永20年）: 仙台藩が照井堰を改修
1648-1653年（慶安年間）: 大旱魃が発生
1854年（嘉承7年）: 柏原左衛門が北照井堰に穴山隧道（現在の猿鼻隧道）を建設

明治時代以降は、管理体制が変遷しました。

1871年（明治4年）: 廃藩置県により、照井堰の管理が郡役所に移管
1908年（明治41年）: 照井堰の管理が照井堰普通水利組合に移管

昭和時代には、台風による被害からの復旧工事や、水路の改修が行われました。

1950-1951年（昭和24-25年）: カスリン台風とアイオン台風で壊滅した頭首工の復旧工事を岩手県が実施
1951-1955年（昭和26-30年）: 岩手県営事業として全幹線水路を改修、素掘り水路に石積護岸を施工
1952年（昭和27年）: 法制定により、照井堰土地改良区となる
1985年（昭和60年）: 大江堰土地改良区と合併し、照井大江土地改良区となる
1996年（平成8年）: 舞川土地改良区、平泉土地改良区と合併し、照井土地改良区となる
2015年（平成27年）: 照井土地改良区と束稲土地改良区が合併

照井堰用水の特徴

照井堰用水は、以下の3つの水路から構成されています。

北照井堰: 平泉町を流れ、衣川に注ぐ水路。農業用水だけでなく、世界遺産「平泉―仏国土（浄土）を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」の構成資産である毛越寺浄土式庭園の水源としても利用されています。
南照井堰と大江堰: 江戸時代に一関藩によって完成した水路。現在も一関市、平泉町の穀倉地帯1,073haの水田に水を供給しています。

近年の評価

照井堰用水は、その歴史的価値と文化的価値が認められ、以下の選定・登録を受けています。

2006年（平成18年）: 疎水百選に選定
2016年（平成28年）: 国際かんがい排水委員会のかんがい施設遺産に登録

その他

照井堰用水の水源である大〆切頭首工は、北緯38度56分57.77秒、東経141度2分8.13秒に位置しています。

照井堰用水は、地域の人々の生活と文化に深く根ざした貴重な水利施設であり、今後もその歴史と役割を伝えていくことが重要です。

関連情報

食と農の景勝地（「日本のもち食文化と黄金の國の原風景」）
久保川流域ため池群
* 照井土地改良区 公式サイト

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