照国丸

照国丸（てるくにまる）

照国丸は、日本郵船がヨーロッパ航路で運航していた貨客船であり、第二次世界大戦の際に日本が最初に失った商船となりました。この船の名前は、鹿児島にある照国神社に由来しています。

船歴

建造の経緯

1920年代、日本郵船はすでに複数の船舶をヨーロッパ航路に誘導していましたが、他国の競合が新型の客船を導入するようになり、集客に影響が出始めました。そのため、日本郵船は1929年に新たに12,000トン級の照国丸と靖国丸を建造し、ロンドン航路の強化を目指しました。

就航後の活動

照国丸は1930年6月30日に横浜からロンドンへの処女航海を開始しました。横浜とロンドン間の定期航路だけでなく、アントワープやロッテルダム、ハンブルクなどの北海地域も訪れる「ノース・コンチネンタル・クルーズ」としても利用されました。

船内は洋風でありながら、日本の美を取り入れた装飾が施されており、特に特別室のサロンには蒔絵が用いられ、外国人客にも好評でした。1932年には有名な映画俳優、チャールズ・チャップリンとその兄シドニーが乗船し、日本を訪れた後、再度照国丸でヨーロッパへ向かいました。

航路

照国丸の主な航路は、横浜から神戸、上海、香港、シンガポール、ペナン、コロンボ、アデン、スエズ、ポートサイド、ナポリ、マルセイユ、ジブラルタルを経由し、最終的にロンドンまで到達するものでした。往路は46日、復路は41日かかりました。

沈没

1939年9月、第二次世界大戦の始まりに際し、照国丸は横浜港から航海を開始しました。名古屋、大阪、神戸、門司、上海、香港、シンガポール、ペナン、コロンボ、ベイルート、ナポリを経て11月にマルセイユに到着しました。その後、ここでも拘束を受け、多くの乗客が降り、残りましたが最終的には28名になりました。

次に寄港したカサブランカを出た後、照国丸は11月21日に出航し、その数時間後に爆発が発生しました。船長は浅瀬に乗り上げさせることを試みましたが、機関は停止していました。最終的に、全員の退船が命じられ、沈没する際に船体の一部が水面上に残る形となりました。幸いにも、軽傷者は数名で済み、乗員や乗客はイギリスの掃海艇に救助されました。

その後

沈没事故の後、日本政府はこの事件の責任がどちらにあるかを問うたものの、真相は明らかにならず、両国とも責任を否定するにとどまりました。日本郵船はその後も欧州航路を維持し、当時航海中だった他の船も引き続き運航を行いました。照国丸の最後のヨーロッパ航路はボンボンなどを経由し、帰国を果たしたのです。

照国丸の歴史は、第二次世界大戦の影響を受けた商船がいかにして社会に影響を与えたかを示す一例であり、今なお人々の記憶に残る重要な出来事と言えるでしょう。

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