熊延鉄道

熊延鉄道の概要

熊延鉄道は、熊本県熊本市の南熊本駅から砥用町（現在の美里町）にある砥用駅までを結んでいた鉄道路線で、1964年に運行を終了しました。この路線は、元々は熊本と宮崎県の延岡を結ぶ鉄道を目指して設計されたものでしたが、その計画は実現しませんでした。現存する熊延鉄道の運営会社は、今では熊本バスとして地域のバス運行に携っています。

歴史的背景

熊延鉄道の礎は、1912年にまで遡ります。この年、熊本軽便鉄道に対し鉄道免許が下付され、同年に御船鉄道株式会社が設立されました。初めて開通した区間は1915年に春竹（現・南熊本）から鯰間までの区間で、歴史と共に路線は延伸されました。それから数年後の1923年には、御船 - 甲佐間が開通し、最終的には1932年に甲佐から砥用間が開業しました。その後、1956年に南甲佐駅が新たに開業し、1960年に国鉄豊肥本線の水前寺駅まで乗り入れを開始しています。

運行形態と廃止

1961年には、南熊本 - 砥用間を直通する列車が 12往復運行され、当時の運行ダイヤでは1時間10分から20分程度で全線を結ぶことができました。しかし、1964年3月31日に熊延鉄道は正式に廃止されました。廃止当日には特別に運賃無料の記念列車が1往復運行され、多くの人々に惜しまれながらの終焉となりました。

使用されていた車両

熊延鉄道では、開業当初から蒸気機関車や客車が運用されていました。最初に導入されたのは大日本軌道鉄工部製の蒸気機関車で、車両は主にタンク機関車が使用されていました。開業時には2両の蒸気機関車と4両の客車、さらに10両の貨車が揃えられました。これらの機関車は、主に運行が終わる1964年まで現役として活躍していました。

八角トンネル

熊延鉄道の遺構の中でも特に注目されるのは「八角トンネル」と呼ばれる場所です。このトンネルは、南甲佐駅跡と佐俣駅跡の間に位置し、その独特の八角形の断面からこの名が付けられました。実際は一般的に見られるトンネルとは異なり、擁壁が補強された構造物で、鉄道の跡地は現在は歩道として利用されています。

現在の状況

熊延鉄道が廃止された後、その社名は熊本バスに引き継がれ、今も地域交通の重要な役割を果たしています。さらに、個々の駅跡や遺構が地域の歴史の一部として保存されており、訪れる人々にその歴史的な価値を伝えています。廃止された鉄道路線の長い歴史は、地域住民や観光客の心に残り、熊延鉄道の物語は未来へと語り継がれていくでしょう。

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