熊本音楽短期大学

熊本音楽短期大学（くまもとおんがくたんきだいがく）は、かつて熊本県上益城郡御船町にキャンパスを構えていた私立の短期大学です。英語名称は Kumamoto Music Junior College とされ、略称として「熊音短」とも呼ばれていました。学校法人御船学園によって運営され、1972年に開設されましたが、2000年度の入学生を最後に2002年に閉学し、その歴史に幕を閉じました。

概要と特色

本学は、設立当時、九州地方で唯一の音楽専門短期大学として注目を集めました。音楽教育に特化したカリキュラムを展開し、開学当初は音楽科の下に声楽専攻と器楽専攻が設けられ、入学定員は合わせて60名でした。その後、器楽専攻の定員が増員されています。

教育内容としては、音楽分野における専門的な知識と技術の習得に重点が置かれていました。声楽専攻には、声楽実技や音楽教育に関連するコースが設けられ、器楽専攻では、ピアノ、管楽器、弦楽器、打楽器、電子オルガンといった多様な楽器実技に加え、作曲、音楽教育、音楽情報ビジネス、ポピュラー音楽など、幅広い分野に対応したコースが提供されていました。これにより、学生は自身の専門性を深めるだけでなく、音楽を取り巻く多様な領域についても学ぶことができました。

また、国際交流にも積極的で、1978年からは留学生を受け入れる制度を設けていました。さらに、より高度な専門性を追求する学生のために、修業年限1年制の専攻科音楽専攻や、その上の1年制の研究生制度も設置されていました。教職課程としては、中学校教諭二種免許状（音楽）の取得が可能でした。

カレッジマークは、音楽を象徴する音符をモチーフにしたシンプルなデザインでした。

沿革

熊本音楽短期大学の設立準備は1971年 4月23日に設立準備委員会の発足をもって始まりました。同年9月30日には文部省（当時）に短期大学設置の認可申請を行います。翌1972年 3月2日には最初の校舎となる4階建ての1号館が完成。3月30日には学校法人御船学園の設立が認可されるとともに、短期大学の設置認可も得られ、初代理事長には出田憲二氏が就任しました。そして、1972年 4月1日に音楽科（声楽専攻30名、器楽専攻30名、計60名）体制で開学しました。最初の入学式は4月12日に挙行され、82名の学生が入学しました。

施設の拡充も積極的に行われ、1976年7月21日には2号館校舎が、1981年2月28日には体育館兼演奏ホールが、1984年 9月30日には3号館が、1985年 1月31日には4号館がそれぞれ完成しました。学生寮としては、1978年2月に5階建ての女子寮が落成し、最大150名を収容できました。また、学外施設として1987年 4月24日には阿蘇研修所が完成しています。

教育組織の拡充としては、1974年 1月23日に専攻科音楽専攻の設置が認可され、翌4月1日に開講しました。入学定員も変化があり、1975年 12月3日には音楽科の定員増員が認可され、器楽専攻の入学定員が30名から70名に引き上げられ、音楽科全体の入学定員は100名（総定員200名）となりました。

学外での活動も活発で、1989年 1月27日には東京のゆうぽうとホールでオペラ「細川ガラシア」を公演しました。また、開学25周年を記念し、1997年9月14日にはアメリカ・ニューヨークのカーネギーホールで「Kumamoto College of Music Wind Orchestra and Chorus」として単独公演を行うという快挙を成し遂げています。

音楽関連の附属機関として、1985年5月には音楽研究所が、1997年4月には音楽療法情報センターが開設され、研究活動や情報提供も行われました。研究成果は『熊本音楽短期大学紀要』として発表されています。

時代の変化とともに、短期大学は2000年度をもって学生募集を停止することを決定しました。2000年 4月1日には、全国音楽療法士養成協議会から音楽療法士（2種）養成の教育課程として認定を受けています。そして、2001年 4月1日には同じ学校法人御船学園によって平成音楽大学が開学しました。熊本音楽短期大学は2002年 3月31日に閉学し、同年7月30日をもって正式に廃止されました。

学生生活と施設

学生生活においては、「Music Festa」と呼ばれる学園祭が開催され、学生たちの活気あふれる発表の場となっていました。学内には学生食堂が設けられていました。

図書館はおよそ20,000冊の蔵書数を誇り、学生や教員の学術・研究活動を支えました。

主な出身者

熊本音楽短期大学からは、様々な分野で活躍する人材が輩出されました。著名な出身者としては、ラジオパーソナリティの相越久枝氏や、マリンバ奏者のミカ・ストルツマン氏などがいます。

卒業後の進路としては、本学の専攻科へ進学する者のほか、武蔵野音楽大学など、他大学の音楽学部への編入学という道もありました。

熊本音楽短期大学は、約30年間にわたり九州の音楽教育を牽引し、多くの音楽家や関連分野の専門家を育成しました。その教育理念と実績は、後継校である平成音楽大学に引き継がれています。

もう一度検索