熊野地駅

熊野地駅の概要

熊野地駅（くまのじえき）は、和歌山県新宮市に位置していた日本国有鉄道（国鉄）紀勢本線の貨物駅であり、かつては重要な役割を果たしていました。新宮市は熊野川流域にあり、山林から伐り出された原木は、筏に組んで運ばれ、新宮の町に集まっていました。このため、町は木材産業の中心地として繁栄し、明治時代には川沿いに貯木場が設けられ、多くの材木問屋や製材所が立ち並びました。

新宮鉄道の設立と熊野地駅の誕生

当時、熊野川の河口は砂州により閉塞され、喫水の深い船舶が新宮に寄港することができず、木材の搬出に支障をきたしていました。この問題を解決するため、明治の木材業者たちは、新宮から勝浦方面への鉄道輸送を計画し、新宮鉄道を設立しました。熊野地駅はこの鉄道によって開設され、原木・木材の積み出し駅として機能しました。

新宮鉄道の線路は、熊野地駅を目指して北上し、最終的には新宮駅へ至っていました。この時、新宮駅は東西沿いに線路が走っており、現在の「新宮駅前」交差点から東に向かう道がその跡地です。1934年には、新宮鉄道が国に買収され、鉄道の延伸工事が進められました。

駅の移転とその後の変遷

新宮駅を北に延長する工事の際、西には伝統的な市街地があり、新宮駅は南北方向に再構築される必要がありました。そのため、1938年には新宮駅が新しい位置に移転され、勝浦方面からの列車は熊野地駅を経由することなく新しい駅に到着することになりました。このことにより、熊野地駅は本線から外れ、盲腸の貨物支線の終点に位置するようになりました。

戦後、新宮川水系にはダムが次々と建設され、伝統的な筏流しは徐々に廃止されました。1964年までに専らトラック輸送に置き換わり、1967年には熊野川河口の貯木場が埋め立てられましたが、その一部は陸上の貯木場として残り、新宮原木市場となっています。

熊野地駅の廃止とその後の影響

1982年、国鉄の合理化の一環で熊野地駅は廃止され、駅の路線は道路に転用されました。また、熊野地駅から製紙工場への引込線も存在し、最終的には王子製紙の熊野事業所がこの工場を運営していましたが、2000年に閉鎖されました。現在、その跡地は「王子製紙記念公園」として整備されています。

駅の歴史のまとめ

熊野地駅の歴史は、1913年の開業から始まりました。新宮鉄道の三輪崎駅から新宮駅間の開通にともない、新たな役割を持って誕生しました。その後、国有化や駅の移転、さらには貨物駅に特化する過程を経て、1982年に廃止されるまで多くの歴史を刻みました。熊野地駅は、特に木材産業と相互に関連する文化や社会的な背景を持つ駅であったと言えるでしょう。

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