熊野聰

熊野聰（くまの さとる）

熊野聰氏は、1940年2月11日に東京都で生まれました。日本の歴史学者であり、特に中世北欧史の研究において著名な存在です。名古屋大学の名誉教授として、長年にわたり研究と教育に貢献してきました。

学歴と職歴

熊野氏は、1962年に東京教育大学文学部史学科を卒業後、一橋大学大学院経済学研究科に進学しましたが、1967年に中退しました。その後、滋賀大学経済学部で助手、講師、助教授を経て、1982年に教授に就任しました。1986年には名古屋大学教養部の教授となり、同時に一橋大学から経済学博士号を授与されました。1993年には名古屋大学情報文化学部の教授に異動し、2003年からは豊田工業大学工学部の教授を務めました。これらの経歴からも、熊野氏が幅広い分野で活躍してきたことが伺えます。

研究分野と業績

熊野氏の専門は中世北欧史であり、特にヴァイキング社会や北欧初期社会の構造に関する研究で高い評価を得ています。増田四郎氏の門下として歴史研究の基礎を築き、1994年から1996年まで日本アイスランド学会の会長を務めました。その研究は、単に過去の出来事を記述するだけでなく、社会構造や経済活動、文化的な側面まで多角的に分析し、歴史に対する深い洞察を提供しています。

主要な著作

熊野氏は、数多くの著作を通じて研究成果を発表しています。

単著
『共同体と国家の歴史理論』(青木書店, 1976年)：歴史理論に関する深い考察を示した著作です。
『北の農民ヴァイキング 実力と友情の社会』(平凡社, 1983年)：ヴァイキング社会の農民としての側面と社会構造を描いています。
『北欧初期社会の構成』(滋賀大学経済学部, 1984年)：北欧初期社会の構造を詳細に分析しています。
『北欧初期社会の研究 ゲルマン的共同体と国家』(未來社, 1987年)：ゲルマン的共同体と国家の関係を論じています。
『サガから歴史へ―社会形成とその物語』(東海大学出版会, 1994年)：サガ（物語）を歴史的資料として捉え、社会形成を分析しています。
『北欧史 新版世界各国史21』(山川出版社, 1998年、百瀬宏、村井誠人共編著)：北欧史の全体像をまとめた包括的な著作です。
『ヴァイキングの経済学―略奪・贈与・交易』(山川出版社, 2003年)：ヴァイキングの経済活動を多角的に考察しています。
『続・サガから歴史へ』(麻生出版, 2011年)：『サガから歴史へ』の続編として、さらに研究を深めた内容です。

訳書・共訳書・監訳書
M.ブロック「古代奴隷制の終焉」（三好洋子、熊野聰訳）M.I.フィンレイ編『西洋古代の奴隷制 学説と論争』(東京大学出版会, 1970年)：古代奴隷制に関する重要な研究の翻訳です。
K.ハストロプ編『北欧の自然と生業 北欧社会の基層と構造』（早野勝巳、清水育男、熊野聰訳）(東海大学出版会, 1996年)：北欧の自然と社会構造に関する包括的な著作です。
J.G.キャンベル編『ヴァイキングの世界 図説世界文化地理大百科』（熊野聰、神田姿子、角谷英則、伊東豊訳）(朝倉書店, 1999年)：ヴァイキングの世界を総合的に解説する図説です。
B.アンブロシアーニ、H.クラーク著『ヴァイキングと都市』（角谷英則訳）(東海大学出版会, 2001年)：ヴァイキングと都市の関係を詳しく考察した著作です。
* R.ボワイエ『ヴァイキングの暮らしと文化』（持田智子訳）(白水社, 2001年)：ヴァイキングの日常生活と文化を詳細に記述しています。

熊野聰氏の研究は、中世北欧史の分野における重要な貢献であり、その著作は学術界だけでなく、一般読者にも広く読まれています。氏の著作を通じて、ヴァイキング社会や北欧初期社会への理解が深まることは間違いありません。

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