熱い絹

『熱い絹』

『熱い絹』（あついきぬ）は、松本清張による魅力的な長編推理小説です。この作品は、1967年に起きた実際のジム・トンプソン失踪事件を土台にしており、著者独自のミステリー世界を展開しています。ユニークなストーリー展開を持つ本作は、1972年から1974年にかけて『小説現代』で連載され、その後1983年に改稿を経て『報知新聞』に再連載されました。最終的には1985年に書籍化され、多くの読者に愛され続けています。また、1998年にはテレビドラマ化され、再評価を受けました。

あらすじ

物語は1967年8月12日、軽井沢的な別荘で発見されたアメリカ人女性の惨殺事件から始まります。彼女は自室にて扼殺され、壁には美しい熱帯蝶の標本が掲げられています。この謎の解明を担当するのは、長野県警の長谷部忠雄警部です。事件の不審な点として、被害者の兄・ジェームス・ウィルバーが、妹の殺害に関与しているにもかかわらず、7月16日にマレーシアのキャメロンハイランドで姿を消していることが浮かび上がります。

長谷部は、この失踪事件と軽井沢の殺人事件の関連性を探り始め、さらに8月26日にはキャメロンハイランドで熱帯蝶採集ツアーに参加していた日本人の惨殺死体が発見される事態に至ります。この一連の事件は、長谷部をマレーシアへと導くことになります。彼は現地で様々な奇怪な人物と出会いながら、事件の背後に隠された真実を探り始めます。

主な登場人物

• - 長谷部忠雄: 長野県警の捜査一課長で、本作の探偵役。アメリカ人女性の殺害事を受けて過去の事件に思いを馳せます。
• - 村田刑事: 老練な刑事で、長谷部と共にマレーシアで捜査を行います。
• - 山形佐一: 和服の服飾デザイナー。新しいデザインを求め、事件に巻き込まれます。
• - 高橋不二夫: 「瑠古堂」のアルバイトで、山形と運命的に出会います。
• - オスマン警視: マレーシア警察の捜査課長で、独自の視点から捜査を進めます。
• - フランシス・ウィルバー: 被害者の姉で、軽井沢に別荘を持っています。
• - マーシャル夫妻: ジェームスの友人で、キャメロンハイランドの宿の持主です。

作品の補足

この作品は、原作から改稿されたことにより、より典型的なミステリーの要素が強化されました。また、松本清張自身がエラリー・クイーンとの対談を通じてトンプソン失踪事件のさらなる関心を深めたことも、本作の背景に影響を与えています。

『熱い絹』は、ミステリー愛好者だけでなく、多くの読者に人間の深層心理を描く力強い作品として評価されています。事件の真実を追求する長谷部の姿や、絡み合う登場人物たちの人間模様が、読者を引き込む要素となっています。

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