熱帯博物館 (オランダ)

アムステルダム 熱帯博物館：異文化理解を深める人類学の殿堂

アムステルダムのリンネウス通りに位置する熱帯博物館（Tropenmuseum）は、1864年に設立された歴史ある人類学博物館です。アムステルダム最大級の博物館の一つとして、世界各地の熱帯文化に関する多様な展示を行っています。

歴史：植民地博物館から国際的な文化交流拠点へ

博物館の起源は、フレデリック・ヴァン・エーデン（作家フレデリック・ヴァン・エーデンの父）がハールレムに設立した植民地博物館に遡ります。当初は、インドネシアなど海外におけるオランダの植民地の様子を紹介する目的で設立されました。その後、植民地研究所が設立され、植民地からの収益を増やすための研究が進められる中で、博物館は民俗学的な情報収集にも力を入れるようになります。

1926年には現在のアムステルダム東部の建物に移転し、3万点を超える展示物と膨大な写真コレクションを所蔵する博物館として開館しました。第二次世界大戦後、インドネシアが独立すると、博物館の対象はオランダの植民地だけでなく、南米、アフリカ、アジアの開発途上国へと拡大。1960年代から1970年代にかけては、貧困や飢餓といった社会問題にも焦点を当てるようになり、1970年代初頭には子供向けの展示施設も増設されました。近年では、オランダ国内外の文化に焦点を当てた展示も行われています。

施設：壮麗な歴史的建造物

博物館の本館は、J.J. ヴァン・ニューケルケンとM.A. ヴァン・ニューケルケンによって設計され、第一次世界大戦や労働者のストライキの影響で完成までに11年もの歳月を要しました。建物内の装飾品は20世紀前半に制作されたもので、その豪華な内装は訪れる人々を魅了します。2003年にはアムステルダムの歴史的建造物に指定されました。

収蔵品：多様な文化を物語るコレクション

熱帯博物館は、175,000点を超える品物、150,000点以上の写真、10,000点以上の図画・絵画・文書を所蔵しています。コレクションは、東南アジア、南アジア、西アジア、北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ、カリブ海地域など、地域別に分類されています。また、中国、朝鮮、日本など、対象地域外のコレクションも含まれています。

写真コレクションは、主に1855年から1940年頃までのオランダ旧植民地の歴史的な写真で構成されています。博物館は、これらの写真の一部をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの形でウィキメディア・コモンズに提供しています。

芸能に関するコレクションも充実しており、5,500点以上の楽器や、仮面、操り人形などの関連品が収蔵されています。特に、インドネシアから収集された21,000点以上の繊維工芸品は特筆に値します。子供向けの展示施設では、インタラクティブな展示が人気を集めており、年間3万人もの子供たちが訪れます。

国際活動：異文化理解の推進

熱帯博物館は、王立熱帯研究所の活動の一環として、異文化への関心を高め、異文化間の交流を促進することを目指しています。海外向けの展示やカタログの配布も積極的に行っています。

熱帯博物館は、過去の植民地時代の歴史を背景に持ちながらも、現代社会における異文化理解の重要性を訴えかける、貴重な文化施設です。アムステルダムを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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