爆笑エレベーター

『爆笑エレベーター』（ばくしょうエレベーター）は、1970年の春から秋にかけて、NET（現在のテレビ朝日）系列で水曜夜7時30分から8時00分にかけて放送された、お笑いを中心としたバラエティ番組です。わずか半年間の放送でしたが、そのユニークな企画で記憶されています。

番組の始まりと前期の内容

番組が始まった当初、その中心を担っていたのはプロの芸人たちでした。落語家や漫才師、その他のお笑いタレントがスタジオに登場し、自慢のネタを披露しました。当時のバラエティ番組としては斬新な企画が採用されており、出演者が乗るための特別な装置が用意されていました。それは、ゴンドラのような形状をしたエレベーターです。

この前期の番組の鍵となったのは、観客の「笑い」でした。芸人のネタに対して観客がどれだけ笑ったか、その「笑音度」が測定され、その大きさに応じて芸人が座るエレベーターが上昇するという仕組みでした。まるで観客の笑いが、芸人のパフォーマンスの評価を「物理的に」可視化するかのようでした。番組の構成や内容は、日本の伝統的な演芸形式である「大喜利」に近いものがあり、言葉の面白さや機知が試される側面が強調されていました。

番組開始当初の司会は、当時、同局の昼の看板情報番組『アフタヌーンショー』の顔としても知られていた桂小金治が務めました。彼は落語家としての豊かな経験と話術を活かし、番組を進行させました。彼にとって、『爆笑エレベーター』は自身のルーツである演芸分野でその才能を発揮できる貴重な機会であったと言えるでしょう。

番組内容の変更と後期

しかし、プロの芸人によるネタ披露と笑い声によるエレベーター上昇という前期の企画は、残念ながら視聴率面で苦戦を強いられました。この結果を受け、番組は大きな方針転換を図ることになります。

放送期間の後半にあたる後期からは、番組の内容が全面的に変更されました。司会者も桂小金治から桂菊丸へと交代しました。そして、プロのお笑い芸人によるパフォーマンスに代わり、番組の中心となったのは「大声コンテスト」です。一般の視聴者が参加する形式に切り替わったのです。

大声コンテストでは、毎週8名の一般参加者が登場し、トーナメント方式で勝ち抜き戦が行われました。参加者は2台用意されたエレベーターのそれぞれに1名ずつ座り、順番に大声を出します。その声の音量によってエレベーターの上昇する高さが決定され、より高く上がった方が次のラウンドに進めるというルールでした。シンプルながらも分かりやすい勝敗決定方法が採用されていました。参加者は年齢層によって区分けされており、番組の前半には子供たちが、後半には大人が登場するという構成になっていました。

番組の終焉と最終回

『爆笑エレベーター』は、1970年9月30日の放送をもって終了しました。わずか半年間の短い放送期間ではありましたが、前期のお笑いエレベーター、後期の大声コンテストと、番組のコンセプトを大胆に変更しながら放送を継続しました。

最終回は、それまでの勝ち抜き戦を勝ち上がってきた参加者による「チャンピオン大会」として放送されました。そして、見事最終回のチャンピオンに輝いた参加者には、当時のテレビ番組の賞品としては非常に豪華な、自動車が1台プレゼントされました。視聴率は振るわなかったものの、番組の最後にふさわしいサプライズが用意されていたと言えます。

このように、『爆笑エレベーター』は、短い期間ながらも二つの異なるコンセプトで放送された、当時のNETにおける実験的なバラエティ番組の一つであったと言えるでしょう。

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