片山松斎

片山松斎について

片山松斎（かたやま しょうさい）は、江戸時代後期の文人であり、天文学者としても知られる存在です。彼は明和5年（1768年）に生まれ、父は片山国雄、母は仁賀保誠章の娘でした。松斎という号の他に、諱は国倀（くになが）、通称は権平、後に円然（えんぜんまたはえんねん）と呼ばれました。片山家は三河地方の譜代の旗本と伝えられ、松斎の家族背景は歴史的にも豊かでした。

松斎は天明6年（1786年）に父の死を受けて家督を継ぎ、武蔵国埼玉郡に土地を持ち、100石と廩米250俵を与えられました。しかし、彼は長い間無役のまま過ごし、芝新堀に自宅を構え、柔術の指導を行っていたとも言われています。学問と文筆の世界に身を投じるため、早い段階で家督を3男に譲りました。

松斎の知的関心はもともと仏教思想、特に天台宗に向けられていましたが、文化7年（1810年）頃に芝新銭座に居を構えていた司馬江漢と交流を持ち、彼の門人として西洋天文学に深く傾倒していきました。特に、コペルニクスによる地動説に影響を受け、これを広めることに努めました。

彼の天文学に関する著作には、文化7年（1810年）の『天学略名目』、文政4年（1821年）の『天文法語』、文政10年（1827年）の『地転窮理論』、天保6年（1835年）の『天学略名目羽翼』があり、西洋の天文学を日本に紹介する重要な果たしました。また、彼は歴史や神道に関する著作もあり、享和3年（1803年）の『神道大綱集』や文化元年（1804年）の『続日本王代一覧後記』、さらに文政2年（1819年）の『続唐土王代一覧』、天保4年（1833年）の『国学正義編』などが知られています。

特に『国学正義編』では平田篤胤の主張を激しく批判しています。平田が日本を世界の中心として誇ることに対して、「国土に上下本末いささかも有ることなし」とし、日本を特別視する考えを否定しました。彼の批判は、当時の国学思想に対する重要な意見として記録されています。

松斎の著作はすべて写本で残されており、正式な刊行作品は存在しません。そのため、後世への影響を考えると、彼の業績は多くの人に知られることは少なかったかもしれません。しかし、彼の着眼点や思考は深く、天文学の進展に寄与した人物として一理ある存在と言えるでしょう。

松斎の没年ははっきりしていませんが、65歳前後の天保6年（1835年）にはまだ健在であることが確認されています。また、彼の墓所は谷中の竜泉寺にあると伝えされています。江戸時代後期の日本において、片山松斎は天文学と文筆の分野において重要な足跡を残した思想家であり、彼の貢献が後の世代にどのように伝わっていったのかを考えることは興味深いテーマだと言えるでしょう。

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