片想い (槇みちるの曲)

片想いの歴史：槇みちるから中森明菜、そしてその先へ

1969年、槇みちる（現：まきみちる）のシングル「鈴の音がきこえる」のB面曲として世に送り出された「片想い」。安井かずみの作詞、川口真の作曲によるこの楽曲は、その後、数々のアーティストによってカバーされ、長く愛される名曲となりました。その歴史を、オリジナルからカバー、そしてチャート成績やライブパフォーマンスまで、詳細に見ていきましょう。

中尾ミエ：ロングヒットの立役者

1971年、中尾ミエが「片想い」をカバーし、シングルとしてリリース。しかし、当初は大きな話題にはならず、静かに廃盤となりました。ところが、それから5年以上が経った1977年、札幌の有線放送でリクエストが急増。この予想外の展開を受け、レコード会社はシングルを再発売するという異例の事態となりました。

この再発売は、見事に成功を収め、オリコンチャートで28位まで上昇。なんと36週もの間TOP100にランクインし、ロングヒットを記録しました。最終的な売上枚数は30万枚（オリコン集計による推定累計売上は17.7万枚）に達し、中尾ミエ版「片想い」は、その後のカバーブームの礎を築いたと言えるでしょう。中尾ミエ自身も、この曲を「いい曲だな」と思い、「無理やりもらった曲」と語っており、その魅力を確信していたことがうかがえます。

中尾ミエ版シングルの収録曲

1971年盤

片想い (作詞：安井かずみ／作曲・編曲：川口真)
それが何になる (作詞：柴田かおり／作曲：井上たかし／編曲：川口真)

1977年盤

片想い (作詞：安井かずみ／作曲・編曲：川口真)
駐車場（パーキング）(作詞：山口洋子／作曲：加瀬邦彦／編曲：馬飼野俊一)

中森明菜：新たな解釈と時代への共鳴

1994年、中森明菜がカバーアルバム『歌姫』に「片想い」を収録。さらに、「愛撫」との両A面シングルとしてもリリースしました。千住明による編曲で生まれ変わった「片想い」は、中森明菜の表現力によって新たな魅力を放ち、多くのファンを魅了しました。このシングルはオリコン週間シングルチャートで最高17位を記録し、8週にわたってランクインするヒットとなりました。

MCAビクターの女性社員による投票でシングルカットが決定したというエピソードからも、この曲が持つ普遍的な魅力が伺えます。『歌姫』にはアルバムバージョンも収録されており、オリジナルとは異なるアレンジが施されています。

音楽評論家・小貫信昭氏は、中森明菜版「片想い」について、「先進性の高い楽曲だったため発表当時は評価されなかったが、今、この曲に時代が追いついた」というプロデューサー川原伸司のコメントを紹介しつつ、「一定の仰角をたたえ、淡々と盛り上がるあたりを上手に自分のものにしている」と高く評価しています。

中森明菜版シングルのライブパフォーマンス

中森明菜は、1994年4月1日放送の『ミュージックステーションSPECIAL』、そして同年5月6日放送の『ミュージックステーション』で「片想い」を「愛撫」と共に披露しました。

中森明菜版シングルの収録アルバム

歌姫伝説〜90's BEST〜

その他のカバーアーティスト

「片想い」は、中尾ミエ、中森明菜以外にも多くのアーティストにカバーされています。

柏原芳恵（1984年発表のカバーアルバム『最愛』収録）
香坂みゆき（1991年発表のカバーアルバム『カントス2 (CANTOS2)』収録）
諫山実生（2007年発表のシングル『とおりゃんせ』2曲目収録）

著作権情報

まとめ

「片想い」は、時代を超えて愛され続ける名曲であると言えるでしょう。それぞれのアーティストがそれぞれの解釈で歌い上げた「片想い」は、聴く人の心に深く響き、その魅力を改めて感じさせてくれます。そして、そのロングヒットの裏には、楽曲そのものの魅力だけでなく、時代背景や、アーティスト、そしてレコード会社の戦略など、様々な要因が絡み合っていることがわかります。この楽曲が持つ普遍的な魅力と、その歴史は、これからも多くの人々に語り継がれていくことでしょう。

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