片桐貞昌

片桐貞昌（片桐石州）：大名茶人、石州流の祖

片桐貞昌、通称片桐石州は、江戸時代前期に活躍した大名であり、茶人としても名を残しました。大和小泉藩の二代目藩主であり、茶道石州流の創始者として知られています。

生涯

慶長10年（1605年）、初代藩主・片桐貞隆の長男として摂津茨木に生まれました。父方の叔父は、賤ヶ岳の七本槍の一人として知られる片桐且元です。

慶長19年（1614年）の大坂の陣では、叔父・且元の身代わりとして徳川家臣の板倉勝重に人質として預けられました。元和3年（1617年）、二代将軍・徳川秀忠に謁見し、片桐家の嫡子として認められます。寛永元年（1624年）には従五位下・石見守に叙任され、以降「片桐石州」と呼ばれるようになりました。寛永4年（1627年）に父の死去により家督を継ぎますが、弟の貞晴に3000石を分与したため、小泉藩の石高は1万3000石となりました。

寛永10年（1633年）から寛永18年（1641年）にかけては、知恩院再建の普請奉行を務め、その間、綾小路柳馬場に居を構え、金森宗和、小堀遠州、松花堂昭乗ら文化人と交流を深めました。また、大徳寺の玉室和尚、玉舟和尚に参禅し、寛永15年（1638年）には玉室和尚より三叔宗関の道号を授かり、大徳寺山内に高林庵を建立しています。

知恩院の再建後は、関東郡奉行などを歴任し、水害地の視察に頻繁に出張するなど、土木建築の分野で功績を挙げました。寛文8年（1668年）正月に遺言状を記し、同年のうちに幕府へ郡奉行の返上を願い出ています。

延宝元年（1673年）11月20日に死去。享年69歳。跡は三男の貞房が継ぎました。墓所は京都市北区紫野の大徳寺高林庵にあります。

茶人としての石州

石州は、初め千利休の長男・千道安の流れを汲む桑山宗仙に茶道を学んだとされています。茶を始めた時期は定かではありませんが、少なくとも20歳前後と考えられています。寛永9年（1632年）に師の宗仙が亡くなった翌年より、知恩院の普請奉行として滞京し、この地での交流が茶人としての成長を大きく後押ししました。30歳頃からは、大和郡山藩主・松平忠明や近江小室藩主・小堀政一（遠州）らと茶席を共にし、奈良の茶人とも交流を深めました。

慶安元年（1648年）、将軍家光の意向により柳営御物（将軍家の名物茶道具）の分類・整理を行い、幕府内での評価を高めました。承応2年（1653年）頃には、後西天皇の行幸にともない當麻寺中之坊に大円窓が特徴的な茶室「丸窓席」を創立、池泉回遊式庭園「香藕園」を改修しています。

寛文3年（1663年）、父の菩提のために慈光院を創立。慈光院は寺としてよりも境内全体が一つの茶席として造られており、表門から建物までの道、座敷や庭園、露地を通って小間の席に至るまで、茶の湯で人を招く際に必要な場所全てが一人の演出によって構成されています。慈光院の庭園は1934年に国の史跡及び名勝に指定され、1944年には書院と茶室が国宝保存法により国宝に指定されました（1950年の文化財保護法により重要文化財となる）。

万治元年（1658年）頃、堯然法親王の下問に対して『一畳半之事』を著し、寛文元年（1661年）には『侘びの文』を書いています。寛文5年（1665年）には将軍家綱に船越伊予守とともに献茶を行い、家綱の茶道指南役となり石州流を確立しました。寛文6年（1666年）には仙洞御所の庭園を修復し、寛文11年（1671年）には慈光院の書院の脇に二畳台目の茶室を増築。この茶室は石州の代表作であり、作者や時代、形式などが明確に伝わる茶室としては最古のものとされています。寛文12年（1672年）には、江戸において記録に残る最後の茶会を開き、水戸光圀を客として招いています。延宝元年（1673年）に死去。

徳川光圀、保科正之、松浦鎮信らは、茶道における貞昌の門弟として知られています。

石州の茶会

石州の茶会は寛永11年（1634年）に初めて記録されており、晩年までに約400回の記録が残っています。

主な茶会記として、以下のものがあります。

旁求茶会記：寛永21年（1644年）に行われた17回の茶会
石州会の留：承応2年（1653年）から承応3年（1654年）にかけて行われた29回の茶会
書院のかこいにて茶之湯之留：万治2年（1659年）から万治3年（1660年）にかけて行われた24回の茶会
石州会席留：寛文3年（1663年）から寛文4年（1664年）にかけて行われた53回の茶会
* 片桐石州席之留：寛文12年（1669年）に行われた59回の茶会

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