版下

版下とは：印刷の原点からデジタル化まで

版下（はんした）とは、印刷工程において刷版を作成するための原稿のことです。具体的には、文字や画像などの要素をレイアウト案に基づいて配置し、校正を行うために用いられます。かつての印刷現場では、版下が刷版の直接的な原版として重要な役割を果たしていました。

旧来の印刷工程における版下

概要

従来の版下は、デザインやレイアウトの指示に従い、台紙上に文字、線画、罫線、トンボなどを配置して作成されていました。版下の基本は、印刷されない部分である「白」と、印刷される部分である「黒」のみで構成されます。ただし、製版フィルムの特性を利用して、淡い青や緑の色をアタリ線などに使用することもありました。逆に、広範囲を黒で塗りつぶす必要がある場合には、濃い赤色のシートを代用することもありました。

版下を構成するもの

台紙（版下台紙）: ケント紙などの厚めの白紙や、市販の印刷用規格台紙が用いられました。規格台紙には、仕上がりサイズに合わせてトンボや方眼目盛りなどが印刷されていました。
文字: 写真植字（写植）されたものが一般的でしたが、手書きのレタリングも用いられました。写植文字は印画紙に焼き付けられ、手書き文字は製版カメラで撮影されて紙焼きにされていました。
線画: イラストや地図などの図版を指します。直接台紙に描き込むこともありましたが、手書きのものは製版カメラで撮影して紙焼きにすることが一般的でした。
罫線・トンボ: 囲み罫や仕切り罫など印刷に残る罫線（イキケイ）と、印刷には残らないアタリ罫（シニケイ）がありました。トンボは、印刷物の仕上がり位置やサイズを示すだけでなく、多色刷りの際の見当合わせの目印としても重要な役割を果たしました。
別原稿（写真・イラスト等）用アタリ: 写真などの網点撮影や色分解が必要な原稿の縮小・拡大率や掲載位置を示す仮原稿です。

版下作成の手順の一例

1. トンボの作図: 台紙にトンボを手描きで作図するか、印刷済みの規格台紙を使用します。
2. 罫線の作図・描画: レイアウト指示に従い、罫線を描画します。アタリ罫には製版フィルムに反応しない淡い青色を使用します。
3. 写植文字・図版類の貼り込み: 写植文字や図版類を糊付けし、レイアウト指示に従って台紙に貼り込みます。

印刷工程における版下作成の現状

かつては版下作成機による自動化が進められていましたが、DTP（Desktop Publishing）の普及により、製版フィルムや刷版へ直接出力することが一般的になりました。これにより、従来の版下工程は多くの現場で姿を消しました。

しかし、少部数の印刷などでは、プリンタ出力をそのまま版下として用いることもあります。高解像度で網点を出力できるプリンタと高精度の製版カメラがあれば、十分なクオリティを保つことが可能です。

まとめ

版下は、印刷技術の進化とともにその役割を変えてきました。DTPの普及により直接的な版下作成の機会は減りましたが、印刷の基礎を理解する上で版下の知識は依然として重要です。また、プリンタ出力による簡易的な版下作成は、現在でも少部数印刷などで活用されています。

関連項目

印刷
写真フィルム
電算写植
* DTP

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