牓示

牓示（ほうじ、ぼうじ）について

牓示は、特に交通の要所や市場、さらには所領の境界において、重要な地点を示すために設置された掲示物を指します。元々は、官庁などが命令や告知を不特定多数に伝えるために、木の板に情報を記載したものでした。具体例としては、遺失物が見つかった際、拾得者がそれを所轄の官庁に届け出ると、その官庁は一定の手続きを経て牓示を行い、所有者を探し出す作業を行いました。

このような掲示は、『類聚三代格』に見られるように、法令や命令を民衆に伝える手段として用いられていました。このことから、当時の朝廷が広く法律や命令を知らせることを目的としていたと理解できます。また、牓示は刀禰や田領など、官庁の指示を受けた人々によって、道の交差点や港、さらには市場などの公共の場に掲示されていたと考えられています。加えて、特定の地域、例えば寺社の境内や山の中などでの命令がその周辺にも貼り出されていたとされています。

考古学的な観点から見ると、平城京や長岡京の側溝跡、さらには石川県の加茂遺跡などから、牓示に用いられた木簡が発見されており、これらは当時の掲示の実態をうかがわせる重要な証拠となっています。

時が経つにつれ、牓示は寺社の境界や、荘園の支配範囲を示すための手段としても用いられるようになりました。これにより、特定の領主の権利の範囲がよりはっきりと示されるようになりました。通常は木や石で作られた柱が用いられ、自然物（例えば岩や立木）もこの役割を果たすことがありました。

荘園が認定される際には、その領主の使者や荘官、また朝廷の代表者や国衙の役人が立ち会う中で牓示が立てられました。これは境界を明確にし、境相論を回避する目的がありました。しかし、国司の交替や他の権力者による何らかの工作によって、これが引き抜かれることもありました。特に中世においては、朝廷の権威が物理的な力を持たなかったため、牓示の権威は絶対的なものではありませんでした。これゆえ、領主や荘官は荘園図などを作成し、それを証拠として強化する必要がありました。

このように、牓示は日本の歴史における情報伝達や権利の確立、さらには土地の境界を明確にするうえで、重要な役割を果たしてきたといえるでしょう。

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