牛伏寺断層

牛伏寺断層の詳細解説

牛伏寺断層は、長野県松本市と塩尻市を南北に走る活断層です。糸魚川静岡構造線活断層系の中部を構成する主要な断層の一つであり、周辺地域における地震発生リスクを考える上で重要な存在です。

断層の概要

牛伏寺断層は、松本市中心部の南に位置する中山丘陵から、東側の山地と盆地の境界に沿って北北西から南南東方向に延びています。この断層は、全体的に牛伏川に沿っており、松本市並柳から中山を経由して崖の湯まで、約7kmにわたって存在します。特に、約5kmの区間では、明瞭な断層崖としてその存在を視認できます。

牛伏寺断層の西側には、牛伏寺前縁断層が並走しており、地下深部ではこれらの断層が一体化していると考えられています。また、高瀬川と犀川の合流点より南では、松本盆地東縁断層と牛伏寺断層が同一の断層セグメントであるとする見解も出ています。

松本市街地付近では、人間の活動によって断層の痕跡が不明瞭になっている部分もありますが、郊外では直線的な断層崖がはっきりと見られ、川や丘陵が断層によって食い違っている様子を確認できます。

活動度と評価

牛伏寺断層は、活断層としての活動度が高く、平均変位速度は1000年間で5～14mと、日本国内の内陸活断層の中でも特に高い値を示しています。ただし、詳細な研究はまだ十分ではなく、データの蓄積が求められています。

地震調査研究推進本部は、糸魚川静岡構造線断層帯の中部を構成する断層の一つとして、以下の情報を公開しています。

断層線の北端位置：北緯36°13'、東経137°58'
断層線の南端位置：北緯36°05'、東経138°02'
活動間隔：約1000年
最新活動時期：700～1500年前
将来の活動：今後数百年以内にM7～M8程度の地震が発生する可能性が高いが、具体的な断層区間は不明
30年以内地震発生確率：14%
地震後経過率：1.2

2011年の東北地方太平洋沖地震後には、地震発生確率が高められています。

活動様式

牛伏寺断層は、東側に約80度傾斜した左横ずれ断層です。ただし、断層線の東側にある犀川丘陵は、後期更新世以降に隆起しているため、断層の北部付近では逆断層の様式を示す可能性も指摘されています。

過去の活動

過去の活動記録は少ないものの、トレンチ調査やボーリング調査の結果から、過去7000年間に2回程度の活動があったことが確認されています。最新の活動時期は、約1200年前の762年、または841年頃と推定されており、その際の変位量は、松本市島内付近で水平方向に約6.5m、垂直方向に約30～40cm、松本市並柳では水平方向に約7mであったとされています。

断層付近で発生した地震

2011年6月30日には、牛伏寺断層付近を震源とするM5.4の長野県中部地震が発生しました。この地震は、同年の東北地方太平洋沖地震の誘発地震である可能性が指摘されていますが、断層との直接的な関連性は現時点では不明です。気象庁の観測では、この地震は別の断層によるものである可能性も示唆されています。

調査研究

牛伏寺断層は、糸魚川静岡構造線断層帯に位置することから、1980年代より多くの研究が行われてきました。特に、2005年度以降は重点的な調査研究が進められており、高感度地震観測網による観測データが蓄積されています。そのため、他の地域に比べて高い精度で微小地震の震源位置を特定することが可能となっています。

参考文献

信濃毎日新聞社編集局編『信州の活断層を歩く』信濃毎日新聞社, 1998年, ISBN 9784784098019
降旗和夫編『長野県 地学のガイド―長野県の地質とそのおいたち』コロナ社, ISBN 9784339075427

関連情報

糸魚川静岡構造線
松本盆地東縁断層

外部リンク

長野県の地震活動の特徴
* 松本市 牛伏寺（ごふくじ）断層 長野県理化学会地学部会

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