牛窪密談記

牛窪密談記（うしくぼみつだんき）

牛窪密談記は、東三河地域の郷土史に関する貴重な資料で、1701年に中神善九郎行忠によって編訂されました。この書籍は、特に牛久保地域の歴史や牧野氏に関する詳細を収録しており、その内容は多岐にわたります。書名や記述方法に複数の表記が見られますが、「牛久保密談記」とも言われることがあります。

書の成立と所蔵

牛窪密談記は、豊橋市の中央図書館に所蔵されており、著者は中神善九郎行忠とされています。元禄14年（1701年）の成立年が確認されていますが、他の資料によると著者の生年や多くの詳細は不明とされ、その中でも特に天明元年に作成された円光大師由来記の存在から、近世に編纂されたものとする見解も提唱されています。また、熱田神宮の菊田家や津山郷土博物館にも異なる写本が存在することが知られています。

牛窪記との比較においては、加筆や訂正の部分が見受けられ、歴史的な記述がより豊かにされています。書籍内には、牛窪とその周辺地域の史実や伝説が交錯した内容が展開されており、特に牛頭天王社にまつわる伝説が本書の冒頭に記載されています。

牧野家の丑年吉事

本書では特に牧野家にまつわる伝説が伝えられています。明応2年（1493年）、牧野古白が一色城に入城した際、牛頭天王社の近くで道を塞ぐ牛が現れ、その牛が古白に道を譲ったというエピソードが伝えられます。この出来事が起こったことを、牛頭天王からの加護と受け止めた牧野家の人々は、それ以降、丑年にはめでたいことがあると信じていました。

この「丑年吉事」の箇所では、牧野家の歴史における様々な出来事が年表形式で紹介されています。具体的には、古白が一色城の城主となったことや、今橋城の築城、さらには牛久保城の築城に至るまでの重要な出来事が挙げられています。また、この丑年に行われた神社の造営や寺領の寄進に関する事例も示されており、当時の社会的背景や文化の愚痴が伺えます。

以下に、牧野家に関する丑年吉事のいくつかを挙げます:

• - 明応2年（1493年）: 牧野古白が一色城主となる。
• - 永正2年（1505年）: 古白が今橋城を築く。
• - 享禄2年（1529年）: 牛久保城を築くことに関与。
• - 天文22年（1553年）: 御津大恩寺に移築を行う。
• - 永禄8年（1563年）: 徳川家康の三河統一に重要な役割を果たしたとされる。
• - 寛永2年（1625年）: 牛久保光輝庵に寄付を行う。
• - 慶安2年（1649年）: 幕府からの朱印状が給付される。
• - 元禄10年（1697年）: 牧野備前守が御津大恩寺にて参拝する。

これらの要素は、牛窪密談記を通して東三河地域の歴史を理解するための貴重な手がかりとなります。また、牧野家の起源やその後の影響について深く知ることができる資料であり、多くの研究者や歴史愛好家にとって興味深い内容が詰まっています。

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