牛若丸原田

牛若丸 原田（うしわかまる はらだ）

日本のプロボクシング史に名を刻む元プロボクサー。本名は原田 勝広（はらだ かつひろ）といい、1947年11月26日に東京都世田谷区で生まれました。バンタム級とフェザー級という二つの階級で、日本タイトルを獲得した実績を持ちます。特筆すべきは、元世界二階級王者である「日本のエース」ファイティング原田氏を実兄に持つことです。

類まれなタフネスと世界への壁

牛若丸原田は、兄であるファイティング原田の後を追う形で、笹崎ボクシングジムに入門しプロの道を歩み始めました。しかし、彼のキャリアには常に一つの大きな弱点が付きまといました。それは、目尻が非常に切れやすいという体質です。多くのKOまたはTKOでの敗戦は、この目尻のカットによるものでした。この宿命的な弱点があったにもかかわらず、後の世界王者を含む数多くの強豪ボクサーたちとリング上で熱戦を展開しました。ルーベン・オリバレス、チューチョ・カスティーヨ、洪秀煥、ダニー・ロペスといった世界的な強豪や、桜井孝雄、スパイダー根本、ロイヤル小林といった日本のトップ選手たちと拳を交え、しばしば互角以上の戦いを見せました。

師である笹崎僙会長は、牛若丸原田のタフネスを高く評価しており、「タフさでは兄（ファイティング原田）以上だ」とまで評したといいます。その粘り強さと強靭さは、リングで多くの観客を魅了しました。にもかかわらず、目尻の弱点が足かせとなり、世界の頂点を目指す世界王座挑戦の夢は、ついに実現することはありませんでした。

日本タイトル獲得と防衛

プロキャリアにおいて、牛若丸原田はまずバンタム級で頭角を現しました。1965年には東日本バンタム級新人王、翌1966年には全日本バンタム級新人王に輝き、その実力を証明します。1967年3月には日本バンタム級王座に挑戦。対戦相手である王者・斎藤勝男が計量失格によりタイトルを剥奪された後、試合に勝利し、王座を獲得しました。

しかし、王座はすぐに失い、その後も同級の強豪、高木永伍と熾烈なライバル関係を築き、王座を巡る激しい戦いを繰り返しました。一度は王座を奪還するも、最終的にバンタム級タイトルを失います。その後、フェザー級に階級を上げ、1974年1月、日本フェザー級チャンピオンの三政直に挑戦し、これを破ってタイトルを獲得。これにより、日本ボクシング史上でも数少ない二階級制覇を達成しました。フェザー級タイトルは二度防衛しましたが、1975年3月にフリッパー上原に敗れ、王座を明け渡しました。

引退後の活動と逝去

70戦36勝（14KO）20敗14分という豊富なプロ戦績を残し、1976年4月22日の試合を最後に現役を引退しました。引退後は、兄であるファイティング原田氏が会長を務めるジムでトレーナーとして後進の指導にあたります。さらに1998年からは千葉県館山市に移り住み、自らの名を冠した「館山牛若丸原田ボクシングジム」を開設。地域のボクシング普及と若手育成に尽力しました。

タフなボクサーとしてリングで戦い続け、惜しくも世界には届きませんでしたが、その不屈の精神は多くのファンの心に残りました。また、引退後も情熱を持ってボクシングに携わり、指導者として多くの選手を育てました。2016年6月15日、68歳でその生涯を閉じました。彼のボクシングへの貢献と、リングで見せた激闘は、日本のボクシング史において語り継がれるでしょう。

もう一度検索