牛込柳町鉛中毒事件

牛込柳町鉛中毒事件

牛込柳町鉛中毒事件は1970年に東京都新宿区で発生しました。これは、牛込柳町交差点周辺に住む住民の血中から高濃度の鉛が検出された事例です。事件は、大久保通りと外苑東通りが交わる交差点で発生しました。この地域は、交通渋滞が多く、車の滞留時間が長いため、排気ガスによる大気汚染が深刻でした。特に、地形の影響で一酸化炭素濃度が他の地域に比べて高いことが問題視されました。このため、住民には呼吸器系の疾病が広がり、「柳町ぜんそく」と称される病気も見受けられました。

1970年の4月、文京区医療生活協同組合が実施した集団検診の結果、牛込柳町交差点近くに住む住民の血中に、平均で47.4μg、最高では100ccあたり138μgもの鉛が含まれることが明らかになりました。これらの数値は一般的な基準の約7倍に達し、労災認定基準の60μgをも上回っていました。この驚くべき結果は新聞などのマスメディアで広く報じられ、その結果、有鉛ガソリンの規制強化が求められることとなりました。

しかし、東京都が実施したその後の集団検診では、最初の検査結果と同じような血中鉛濃度が確認されませんでした。これにより、138μgという高い数値の信憑性には疑問が呈されることになります。しかし、東京都による調査結果からは、大気汚染と血中鉛濃度の間にある関係が示唆されており、排気ガスによる鉛汚染の可能性は否定できません。

対策

この事件を受け、警視庁は牛込柳町交差点の交通量を減らすための措置を講じました。具体的には、大型車両に対する交通規制や、信号の増設が行われ、長時間の滞留を防ぐ施策が導入されたのです。この取り組みは、「ノンストップ作戦」または「柳町方式」と呼ばれ、同様の問題を抱える他の交差点でも導入が検討されました。

さらに、1970年6月5日には、通産省からハイオクガソリンの加鉛量を半減するという通達が出されました。この通達により、アンチノック剤として使用されるテトラエチル鉛の量が、1ガロンあたり2.2ccから1.1ccに減少させられることになり、レギュラーガソリンについても鉛の量を減らす計画が立てられました。また、この措置の5年後には完全に無鉛化することが決定されたのです。その後、無鉛化の取り組みは段階的に進み、1975年にはレギュラーガソリンの無鉛化、1983年にはハイオクガソリンの無鉛化が達成されました。このような迅速な無鉛化の実施は、牛込柳町鉛中毒事件が交通公害として注目されたことが背景にあります。

検査結果への疑問

文京区医療生活協同組合によって実施された最初の集団検診では、驚くべき数値の鉛汚染が確認されたものの、東京都による後の検査では異常が確認されませんでした。このため、最初の検査結果の信憑性が疑問視されることになりました。読売新聞の取材では、採血が印刷工場の駐車場という鉛が多い環境で行われたため、結果に影響を与えた可能性があるとの指摘もあります。

この事件は、都市における交通公害の深刻さを示す重要な事例となり、その後の政策に大きな影響を与えました。

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