牧港補給地区

牧港補給地区（キャンプ・キンザー）

牧港補給地区（まきみなとほきゅうちく、Machinato Service Area）、またはキャンプ・キンザー（Camp Kinser）は、沖縄県浦添市に位置するアメリカ海兵隊の兵站施設です。沖縄本島中南部の西海岸に位置し、浦添市の西側から北部にかけて広がる約3kmの長さと、国道58号線から西海岸までの約1kmの幅を持つ広大な地域を占めています。その面積は浦添市の約14%に及び、都市計画や振興開発における大きな障害となっています。

概要

この施設は、戦前、日本陸軍の南飛行場として建設されましたが、未使用のまま終戦を迎え、米軍に接収されました。1948年には土地の強制接収が行われ、補給基地として拡張されました。沖縄の本土復帰前には、軍需物資の貯蔵や補給、修理などを行う米陸軍の極東随一の総合補給基地として機能しました。現在は米海兵隊が管理しています。

施設概要

施設面積: 2.694km²（2019年1月1日時点）
所有形態: 国有地0.290km²（約11%）、私有地2.447km²（約89%）
管理軍: アメリカ海兵隊
推定兵力: 約2,160人
主な用途: 倉庫
従業員数: 1,154人
管理部隊: 海兵隊キャンプ・バトラー基地司令部
使用部隊: 第3海兵兵站群司令部
主な目的: 宿舎、管理事務所、補給処

基地は、倉庫地区、隊舎地区、住宅地区の3つの地区から構成されています。倉庫地区は国道58号線沿いに、隊舎地区は施設の西側中央部に、住宅地区は施設南北にそれぞれ位置しています。

名称の由来

キャンプ・キンザーという名称は、沖縄戦で戦死し、名誉勲章を追贈された海兵隊員エルバート・ルーサー・キンザー先任伍長にちなんでいます。元々、キャンプ・キンザーは別の場所にあった基地の名称でしたが、牧港補給地区が海兵隊に移管された際に改名されました。

歴史

日本陸軍 南飛行場

この場所は、もともと日本陸軍の「南飛行場」として建設され、「仲西飛行場」や「城間飛行場」とも呼ばれていました。1944年に建設が開始されましたが、特攻用飛行場として使用されることはありませんでした。

米軍 牧港飛行場

沖縄戦で米軍がこの地を確保し、マチナト飛行場（Machinato Airfield）として使用を開始しました。牧港には捕虜収容所もあり、基地建設の労働力として使われていました。

1945年4月28日、米軍が日本軍の南飛行場を接収し、牧港飛行場を建設しました。戦後、物資集積所として使用され、1948年には強制接収により拡張されました。その後、陸軍の補給地区として使用され、1978年に海兵隊に移管されました。

牧港補給地区

1968年から1972年まで、米国民政府がこの地区に所在していました。沖縄返還後、米国民政府は廃止され、牧港補給地区となりました。1978年には米陸軍から米海兵隊に移管されています。

1965年には米陸軍の第7心理作戦群が発足し、司令部が置かれましたが、1974年に解散しました。1970年代には、この基地で展開されていた諜報活動が問題視されました。

2018年3月31日には、国道58号沿いの一部が浦添市に返還されました。

第7心理作戦群

1965年、米陸軍は沖縄に第7心理作戦群を結成しました。司令部は牧港補給地区の奥深くに置かれ、その実態は「謎の諜報部隊」とされていました。この部隊は様々な諜報・心理戦活動を行いましたが、1973年に沖縄から撤退しました。

小湾地域

小湾は、浦添市内で唯一、全地域が基地内に収容された地域です。住民は宮城に移住させられましたが、現在も一部に小湾という名称が残っています。

基地汚染

牧港補給地区では、過去に度々基地汚染が問題となっています。廃油や薬物の流出による沿岸汚染、有害物質による土壌汚染などが確認されています。特に、1986年以前に禁止されていたクロルデン、ディルドリン、PCBなどによる汚染が明らかになっています。

返還への取り組み

2013年、安倍政権によって発表された「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」では、牧港補給地区の全返還が合意されましたが、実際には一部の区域が返還されたにとどまっています。また、移設される米軍施設の費用は、日本側が負担しています。

返還された土地は、以下の通りです。

2013年: 北側進入路1ha
2018年: 国道58号沿い3ha
2019年: 第5ゲート付近2ha

また、倉庫群地区の返還については、代替施設への移設を条件に2025年以降の返還が予定されていますが、基本計画の見直しも発表されています。

返還が言及された地所

安倍政権は牧港補給地区の全返還を言及しましたが、実際には関連施設を米軍基地の4か所に「移設」するものであり、その費用は日本側が負担することになっています。また、海兵隊の国外移転計画が未定であるため、西側の部分の返還見通しも立っていません。

関連項目

沖縄の米軍基地
在日米軍

もう一度検索