牧野守

牧野 守

牧野 守（まきの まもる）は、1930年に現在のサハリンである樺太に生を受けた、日本の著名な映画史研究家であり、また映画製作者としても活動した人物です。

来歴と活動

東京にある文化学院で学んだ牧野守氏は、早くから映画の世界に深く関わります。映画専門誌である『ユニ通信』や、長い歴史を持つ映画雑誌『キネマ旬報』など、様々な媒体に寄稿し、特に『キネマ旬報』では「ガクノススメ」という連載コラムを担当するなど、精力的に執筆活動を展開しました。

彼の最も特筆すべき功績の一つは、日本映画史の研究を推進するために行われた、膨大な量の資料収集です。当時の日本映画に関するあらゆる資料を網羅的に集め、その散逸を防ぎ、研究の基盤を築くことに心血を注ぎました。この地道な努力によって集められた貴重な資料群は、後に「マキノ・コレクション」として広く知られるようになります。

「マキノ・コレクション」は、その学術的な価値が認められ、2007年にはアメリカ合衆国のコロンビア大学図書館へと寄贈されました。この寄贈にあたっては、著名な日本文学研究者であるドナルド・キーン氏が重要な役割を果たしています。コロンビア大学に収蔵されたこのコレクションは、海外における日本映画研究の重要な資料源となっています。

研究活動と並行して、牧野守氏は映画製作にも携わりました。1964年には、映画『黒い血のうずき』において、企画と監督を務めています。

主な業績

著作活動としては、ゆまに書房から刊行された、日本映画に関する重要な論説を集めた大部の叢書『日本映画論言説大系』で監修を担当しています。この叢書には、詩人であり映画評論家でもあった北川冬彦の「純粋映画記」が、牧野氏の監修のもと、全十八巻のうちの一巻として復刻・収録されています。これは、埋もれていた貴重な映画論に再び光を当てる重要な試みでした。

また、日本における映画検閲の歴史を詳細に掘り下げた単著『日本映画検閲史』（パンドラ、2003年）も著しています。これは、表現の自由と映画産業の関わりを知る上で貴重な文献となっています。

その他の活動

牧野守氏は、著作や資料収集、映画製作といった活動のほかにも、様々な形で映画文化に貢献しています。例えば、評論家の大塚英志氏との対談「ミッキーの書式」や、「映画における京都学派の成立」と題した講演などを行っており、多角的な視点から映画について語り、その魅力を伝えてきました。

このように、牧野守氏は、映画史研究における資料収集と体系化、重要な著作の監修・執筆、そして自ら映画を製作するなど、日本の映画史と映画文化の発展に多大な貢献をした人物です。彼の築いた研究基盤と残したコレクションは、今日の日本映画研究においても重要な役割を果たし続けています。

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