牧野成時 (関宿藩嫡子)

牧野成時（まきの なりとき）は、江戸時代前期に下総国関宿藩の世嗣として生を受けた人物です。通称は惣右衛門、兵部と称しました。官位は従五位下、美濃守を授かっています。

出自は、上総国久留里藩の藩祖である黒田用綱の四男として誕生しました。母は都築為次の養女です。初めは直逵（なおみち）と名乗っていました。その後、徳川綱吉の側近として活躍した牧野成貞の養子となります。この縁組により、成時は牧野家の後継者としての立場を確立しました。

天和元年（1681年）12月には、養父である牧野成貞の次女・安（やす）と結婚し、名を成住（なりずみ）と改めました。翌天和2年（1682年）12月14日には、従五位下に叙され、同年に美濃守に任じられています。順調に出世を重ねていたことが伺えます。

しかし、妻である安の身には不幸な出来事が起こります。彼女は徳川綱吉に見初められ、大奥入りを命じられたと伝えられています。大奥入りした夜に自害したという説や、貞享4年（1687年）9月27日に食傷が原因で亡くなったという説（戸田茂睡「御当代記」による）など、その最期については諸説あります。いずれにしても、若くして亡くなったことは確かです。

成時の死後、牧野家の後継者として迎えられたのは、成春（なりはる）でした。成春は、牧野家の家臣である大戸吉房の子であり、成時の養子として牧野家を継承しました。

牧野成時は、短い生涯ではありましたが、関宿藩の世嗣として、また徳川綱吉の側近の養子として、江戸時代前期の歴史に名を残した人物です。彼の人生は、当時の社会情勢や権力構造を映し出す鏡とも言えるでしょう。

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