牧野由朗

牧野由朗 - 社会学者

愛知大学で長きにわたり教鞭を執り、同学の発展に大きく貢献した社会学者、牧野由朗（まきのよしろう）は、大正15年（1926年）6月6日に愛知県豊橋市で生まれ、平成28年（2016年）5月25日にその生涯を終えました。地域社会学および農村社会学を専門とし、愛知大学第12代学長としても広く知られています。また、その功績は国内に留まらず、北京第二外国語学院名誉教授の称号も受けています。

転身と学究の道へ

1947年、秋田鉱山専門学校を卒業した牧野氏は、終戦直後の社会情勢により技術者としての道を断念せざるを得ませんでした。多数の技術者が復員した影響で、就職が困難だったためです。郷里である愛知県豊橋市に戻り、現在の桜丘高等学校の前身である桜ケ丘高等女学校で理科の教員として新たな一歩を踏み出します。

1952年には愛知大学文学部へ3年次編入学し、社会学の道を志します。1954年に卒業を迎えますが、当時の文学部長であった秋葉隆氏からの誘いを受け、副手として愛知大学に留まることとなりました。桜丘高校での教職は、愛知大学での学生生活はもちろん、大学に就職してからも一定期間継続していました。大学では助手時代に、愛知大学短期大学部文科（女子部）の設立に大きく貢献。その設立と同時に、短期大学部の専任講師に就任します。

愛知大学での要職と改革

その後、所属は文学部へ戻り、順調に昇進を重ねます。1981年には文学部長に就任し、大学運営における重要な役割を担うようになります。そして1988年には、愛知大学の理事長を兼任し、第12代学長に就任しました。学長在任中、牧野氏は大学の教育・研究体制の充実に力を注ぎます。特に、当時の法経学部を法学部、経済学部、経営学部の3学部に改組したこと、大学院に中国研究科と文学研究科を新たに設置したことは、同学の教育体制の近代化を推進する上で大きな成果として挙げられます。また、愛知大学の前身である東亜同文書院の歴史と伝統を継承するため、記念基金の創設にも貢献しました。1992年に任期満了に伴い学長を退任しました。

地域に根ざした研究と栄誉

牧野氏の研究活動は、一貫して地域社会学、特に農村社会学に焦点を当てていました。三重県の志摩地方の漁村や愛知県の渥美地方の農村といった特定の地域を対象に、長年にわたり綿密なフィールドワークに基づいた研究を行いました。これらの研究は、日本の地域社会、特に第一次産業に従事する人々の生活や社会構造を深く理解する上で貴重な貢献となっています。その成果は、『志摩漁村の構造』『豊川用水と渥美農村』といった著書として結実しました。

愛知大学で研究者、そして経営者として多大な貢献を果たした牧野氏は、1997年に定年を迎え退職。愛知大学より名誉教授の称号を贈られました。その後も大学との関わりは深く、2008年には他の元学長らと共に愛知大学名誉役員に就任しています。また、長年の学術研究と大学運営における功績が認められ、2001年には日本の栄典である勲三等旭日中綬章を受章しました。さらに、愛知大学同窓会からも、大学の発展や東亜同文書院の伝統継承、同窓会との関係強化への尽力に対し、2012年に同窓会創立60周年特別奨励賞が贈られています。

主な所属学会

- 日本社会学会
- 関西社会学会
- 日本村落研究学会
- 地域社会学会
- 日中社会学会
- 日本協同組合学会
- 日本都市社会学会

主な著書

単著

- 『志摩漁村の構造』（1996年／名著出版）
- 『社会学と私の五〇年』（2002年／スクリーンプレイ）

編著

- 『地域の社会学 - 東海地方の社会学的研究 - 』（1979年／税務経理協会）※安藤慶一郎氏と共編
- 『中国を訪ねる』（1984年／愛知大学友好訪中団）
- 『東海社会論』（1986年／東信堂）※安藤慶一郎氏、中田実氏と共編
- 『志摩の漁村』（1995年／名著出版）
- 『豊川用水と渥美農村』（1997年／岩田書院）

共著

- 『社会学への招待』（1968年／誠信書房）※二宮哲雄氏、光川晴之氏、越智昇氏（編）
- 『村落 - その構造と系譜 - 』（1970年／川島書店）※川越淳二氏、後藤和夫氏（編）
- 『愛知県開拓史』（1983年／愛知県）※愛知県開拓史研究会（編）
- 『日本の沿岸文化』（1989年／古今書院）※九学会連合日本の沿岸文化調査委員会（編）
- 『渥美半島の文化史』（1993年／名著出版）※愛知大学綜合郷土研究所（編）
- 『地域研究を拓く』（1998年／岩田書院）※愛知大学綜合郷土研究所（編）

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