牧野節子

牧野 節子（まきの せつこ）

日本の児童文学作家。1949年（昭和24年）5月22日生まれ。東京都出身。

来歴と思想

東京都に生まれた牧野節子は、日本大学芸術学部放送学科を卒業後、ただちに作家の道を歩んだわけではありませんでした。卒業後、しばらくは電子オルガンやピアノの教師として生計を立てていましたが、その傍らで童話や小説の創作活動に情熱を傾けていました。

転機が訪れたのは1989年。童話「桐下駄」で毎日新聞社主催の「《小さな童話》大賞」を受賞したことが、創作活動における大きな励みとなります。そして1992年には、小説「水族館」で中央公論社（現・中央公論新社）の「女流新人賞」に輝き、この受賞を機に本格的な作家活動へと移行しました。

作家としてのキャリアを確立した後も、後進の指導に熱心に取り組んでいます。白百合女子大学、共立女子短期大学、群馬県立女子大学、武蔵野大学、駒澤大学、日本大学など、複数の大学で講師を務め、創作の楽しさや技術を教えてきました。さらに、NHK文化センター（青山、横浜ランドマーク）や毎日文化センター（対面、通信講座）、日本児童文学者協会の実作通信講座など、多岐にわたる場で「童話・お話の書き方」や「童話を書こう！」といったテーマで講座を開講し、多くの受講生を指導しています。

また、芸術分野で著名な親族を持つことでも知られています。画家である牧野邦夫は叔父にあたり、作家の牧野信一は従伯父にあたります。音楽の世界では、作曲家やアレンジャーとして活動する勝山俊一郎は実弟です。

主な著作と活動

牧野節子の著作は、児童文学を中心にヤングアダルト小説、ノンフィクション、創作指南書など、幅広い分野にわたります。

初期の代表作としては、『極悪飛童』（1992年）、『ねえちゃんはプロレスラー』（1994年）、『星にねがいを』（1995年）、『ぽっぷ』（1995年）、『パパは落語家じゅげむでラップ』（1995年）などがあります。子どもたちの日常やファンタジー、家族の物語など、多様なテーマを描いています。

特に、ノンフィクション作品として注目されるのは、『はばたけスワンベーカリー』（2003年）です。これは、障害のある人たちの自立を支援するパン屋さん「スワンベーカリー」を取材した作品で、丁寧な取材に基づいた温かい筆致が特徴です。

また、自身の経験や指導のノウハウを活かした創作指南書も数多く手掛けており、『童話を書こう!』シリーズ（青弓社より複数巻）、『いますぐ作家になれる楽しい文章教室』などが代表的です。これらの著作は、文章を書くことに興味を持つ人々にとって実践的な手引きとなっています。

近年では、『あぶないエレベーター』（2015年）、『サイコーのあいつとロックレボリューション』（2016年）、そして作家活動のきっかけとなった小説を改訂した『水族館』（2021年）、現代の子どもたちの関心を捉えた『あこがれのユーチューバー』（2023年）など、精力的に新作を発表し続けています。

著作活動以外にも、雑誌や新聞で多くの作品や記事を掲載しています。季刊誌「区民グラフおおた」での連載『あの日、あの時〜プレイバック大田』や、朝日小学生新聞での連載小説『夢見るアイドル』、『海色ロマン』、『森のメロディー』など、読者層に応じた作品を発表してきました。

特に、『婦人公論』や『中央公論』といった一般誌では、多角的な視点からのルポルタージュを多数執筆しています。「ロックバンドに恋する追っかけ熟女たち」「別居は夫婦円満の始まり」「アイドルにハマった女ごころ」といった、現代社会の多様な人間模様や現象に深く切り込んだ記事は、作家としての幅広い関心と取材力を示しています。

日本文藝家協会および日本児童文学者協会の会員として、文壇における活動も行っています。創作活動、教育活動、そして社会現象への洞察を深めるルポルタージュ執筆と、多方面で活躍を続ける作家です。

受賞歴
1989年 - 毎日新聞社主催「《小さな童話》大賞」
1992年 - 中央公論社主催「女流新人賞」

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