物部尾輿

物部尾輿（もののべ の おこし）は、6世紀半ばの古墳時代に活躍した豪族であり、当時の政治において重要な地位を占めていました。父は物部荒山で、安閑天皇と欽明天皇の時代に大連という要職を歴任しました。物部氏は、軍事力を背景にヤマト王権内で大きな影響力を持っていた氏族の一つです。

生涯

尾輿の生涯において特に注目される出来事の一つに、安閑天皇元年（534年）に発生した事件があります。廬城部枳莒喩（いおきべのきこゆ）という女性が、尾輿の首飾りを盗んで皇后・春日山田皇女に献上したことが発覚しました。この事件は尾輿自身にも影響を及ぼす可能性があり、彼は事態を収束させるために、皇后に配下の部民を献上するという措置をとりました。この出来事は、当時の豪族間の権力関係や、事件が政治に与える影響を示すものとして重要です。

欽明天皇が即位すると、尾輿は再び大連に任じられました。欽明天皇元年（539年）には、大伴金村が任那4郡を百済に割譲したことに対して、尾輿は強く非難しました。この行動は、尾輿が国の外交政策にも深く関与していたことを示しており、彼の政治的な影響力の大きさを物語っています。尾輿の批判により、金村は失脚し政界から引退することになり、尾輿の政治手腕が際立つ出来事となりました。

欽明天皇13年（552年）には、百済の聖王（聖明王）から仏像や経典が献上され、仏教公伝の契機となりました。この時、尾輿は中臣鎌子と共に廃仏を強く主張し、蘇我稲目の崇仏の立場と対立しました。仏教の受容を巡るこの対立は、後の日本における宗教と政治の関係に大きな影響を与えることとなります。尾輿の廃仏論は、伝統的な神道信仰を守ろうとする立場から出たものであり、当時の社会における宗教観の多様性を表しています。

系譜

物部尾輿の系譜もまた、彼の人物像を理解する上で重要です。父は物部荒山、妻に弓削倭古の娘である阿佐姫と加波流姫がいます。子には、物部守屋、物部大市御狩大連、太媛、物部石上贄古大連などがいます。これらの子供たちは、後の時代にも物部氏の中心人物として活躍しており、尾輿の血縁が政治や社会に与えた影響の大きさを物語っています。

父：物部荒山
母：不詳
妻：阿佐姫 - 弓削倭古の娘
妻：加波流姫 - 弓削倭古の娘
男子：物部守屋
生母不明の子女
男子：物部大市御狩 - 大連
女子：太媛
男子：物部石上贄古 - 大連
男子：今木金山若子連公
* 男子：多和髪連公

物部尾輿は、政治、外交、宗教といった多方面で影響力を持ち、当時の社会を動かした重要な人物でした。彼の生涯は、古墳時代における豪族の活動や、社会の変化を理解する上で欠かせない要素となっています。

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