物部目

物部目（もののべ の め）は、生没年不詳ながら、『日本書紀』に名を残す古代の豪族であり、大連という重要な役職を務めた人物です。物部伊莒弗（もののべのいこま）の子とされ、『先代旧事本紀』には、物部荒山（もののべのあらやま）と真作連公（まさくのむらじきみ）が子として記録されています。

経歴

『日本書紀』によると、物部目は雄略天皇の即位とともに大連に任じられました。彼は、雄略天皇の治世において、その知性と勇猛さを示す様々な事績を残しています。

雄略天皇元年（457年）、采女の童女君（わらわめぎみ）が天皇の娘である春日大娘皇女（かすがのおおいらつめ）を産んだ際、天皇は童女君と一晩だけ過ごしただけで妊娠したため、その子を自分の子として認めようとしませんでした。しかし、物部目は天皇に対し、「妊娠しやすい人は、一晩でも妊娠することがあります」と諫言しました。この進言により、春日大娘皇女は天皇の娘として認知されることになります。このエピソードは、物部目の聡明さと、時の権力者である天皇に対しても臆することなく意見を述べられる人物であったことを示しています。

雄略天皇13年（469年）、狭穂彦王（さほひこのおおきみ）の玄孫にあたる歯田根命（はたねのみこと）が采女の山辺小嶋子（やまのべのこじまこ）と密通したことが発覚しました。天皇は歯田根命を物部目に預け、謝罪をさせました。この出来事は、物部目が天皇から厚い信頼を得ていたことを物語っています。

雄略天皇18年（474年）には、物部目は物部菟代（もののべのうしろ）とともに、伊勢の豪族である朝日郎（あさひろう）の討伐を命じられました。菟代は進撃を躊躇し、2日間対峙したままでしたが、物部目は自ら物部大斧手（もののべのおおおのて）に盾を持たせて進撃し、朝日郎を捕縛して斬りました。菟代は命令を完遂できなかったことを恥じ、7日間も天皇のもとに報告に訪れませんでした。天皇が菟代が報告に来ない理由を側近に尋ねたところ、讃岐田虫別（さぬきのたむしわけ）が、菟代が臆して朝日郎を捕らえることができず、物部目が大斧手を率いて進撃し、朝日郎を捕縛して斬ったと報告しました。この報告を聞いた天皇は激怒し、菟代が所有していた猪名部（いなべ）を没収し、物部目に与えました。この出来事は、物部目の勇猛果敢な性格と、その武功が天皇に高く評価されていたことを示しています。

物部目は、知性と勇気を兼ね備えた人物として、古代史にその名を刻んでいます。その事績は、当時の社会情勢や権力構造を理解する上で重要な手がかりとなります。

関連項目

飛鳥時代以前の人物一覧
物部氏
* 雄略天皇

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