特定産業振興臨時措置法案

特定産業振興臨時措置法案について

特定産業振興臨時措置法案（通称：特振法案）は、1963年から1964年にかけて日本の内閣によって国会に提出されたが、いずれも審査未了のまま廃案となった。この法案は、外資の参入による国内産業への影響を懸念する中で、通商産業省の佐橋滋が中心となり立案された合理化構想を元にしています。特振法案の提出は、日本の貿易自由化及び資本自由化の流れを受けており、それに対抗するための施策を模索した結果です。

背景と目的

1962年5月、通商産業省は産業構造調査会を通じて、フランスの混合経済を参考にした「新産業秩序」を提案しました。この提案は、国内企業が外資に取って代わられることを防ぐために、政府と民間が協力し合う体制を目指しており、その中で企業の大規模化と健全な産業秩序の確立を目指すものでした。しかし、経団連会長の石坂泰三は、この構想を「形を変えた官僚統制」として反対し、合併や集中の促進にはまず独占禁止法の緩和が必要だと主張しました。

このような状況の中、通産省は特定産業に対する施策を二段階で進める方針を打ち出しました。まず対象業種における自主調整や官民協調の適当性を検討し、その結果に基づいて協調懇談会を設置するという立て付けです。この妥協策により、財界からの了承を得ることができましたが、業界内には自主調整論が根強かったため、「新産業秩序」の具体的内容は未確定のままでした。

法案の進展と廃案

1963年3月には、鉄鋼業や石油化学、自動車産業といった特定産業を指定し、統合や設備投資の促進を骨子とする法案が閣議決定され、同年の国会に提出されました。しかし、この法案は、通産省が提出したもう一つの法案である中小企業基本法案が成立したのに対し、特振法案は三度の審議を経ても未だ成立に至らず、廃案となりました。

特振法案は、通産省、金融界、産業界の協調による新たな経済体制の構築を目指していましたが、反対する意見が多く、特に野党や業界からの抵抗が強かったです。また、通産省内では、統制派と自由派の対立が激化しており、これが政策決定に影響を及ぼしました。特に、産業政策を専門とするグループが統制派として、経済の自由化を志向するグループが自由派を形成していたため、社内での権力争いが繰り広げられました。

結論

1964年には、日本がIMF8条国に移行し、OECDへの加盟が実現しました。この年以降、日本は資本自由化を含む貿易自由化の流れが加速し、特振法案を巡る議論は過去のものとなっていきました。経済政策を巡る流動的な環境の中で、特振法案は一つの歴史的な試みとして記憶されることになりました。

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