特定農林水産物等の名称の保護に関する法律

特定農林水産物等の名称の保護に関する法律（地理的表示法）とは

特定農林水産物等の名称の保護に関する法律（通称：地理的表示法、GI法）は、特定の地域に根ざした農林水産物や食品の名称を保護するための日本の法律です。この法律は、地域ブランドの価値を保護し、生産者の利益を守ると同時に、消費者が安心して高品質な商品を選べるようにすることを目的としています。

法律の概要

この法律は、世界貿易機関（WTO）のTRIPS協定に基づいており、地理的表示の定義もこの協定に準拠しています。しかし、日本の地理的表示法は、産品の特性、社会的評価、確立した品質のすべてが特定の地域に由来する必要があるという点で、TRIPS協定よりも厳しい基準を設けています。EUの原産地名称保護制度と同様に、地理的表示を独立した知的財産権として保護しており、生産者団体（農協や漁協など）が申請し、農林水産大臣が登録と監督を行います。

沿革

• - 2014年：法律が成立し、公布されました。
• - 2015年：法律が施行され、最初の登録産品として「あおもりカシス」「但馬牛」「神戸ビーフ」など7品目が登録されました。
• - 2017年：海外産品として初めて「プロシュット・ディ・パルマ（パルマハム）」が登録されました。
• - 2018年：日欧EPAの発効に伴い、法律が改正され、先使用権の制限や広告規制などが追加されました。

地理的表示保護制度

地理的表示保護制度は、地域特有の自然、文化、社会的な要因によって育まれた産品の名称を、知的財産として保護する制度です。この制度は、単に地名を含むだけでなく、その産品が特定の地域と結びついた品質や評価を持つことを保証します。

保護対象

保護の対象となるのは、食用農林水産物や食品です。ただし、酒類や医薬品は除かれます。また、工芸作物など食用でない農林水産物も対象となる場合があります。登録には、産品の特性、社会的評価、確立した品質のすべてが生産地に由来する必要があります。

生産者団体

登録を受ける主体は生産者団体です。生産者団体は、生産業者を構成員とする団体で、生産基準を策定し、生産行程を管理する責任を負います。これらの団体は、法人格を持っていなくても構いません。生産者団体は、地理的表示の中核的な役割を担い、産品の品質維持とブランド価値の向上に貢献します。

申請手続き

地理的表示の保護を受けるためには、生産者団体が農林水産大臣に申請する必要があります。申請には、産品の名称、特性、生産基準などを記載した明細書などの書類を提出する必要があります。申請された地理的表示は公示され、専門家による審査を経て登録されます。

保護の内容

登録された地理的表示は、その産品を生産する権利を持つ生産者団体以外の使用が禁止されます。また、類似した表示や誤解を招くような表示も禁止されます。違反者には、農林水産大臣による表示の除去命令や刑事罰が科せられます。ただし、登録産品を原料とする加工品については、生産者団体以外の事業者が使用できる場合があります。

商標法との関係

地理的表示と商標権が競合する場合には、調整規定が設けられています。地理的表示と同一または類似の商標は登録が拒否されます。一方で、地理的表示の使用は、既存の商標権を侵害しない限り、商標権の効力が及ばない場合があります。しかし、商標法には、地理的表示が登録されていることを理由に商標登録を拒否する規定はないため、地理的表示と同じ名称の商標登録も可能です。

GIマーク

GIマークは、地理的表示の登録を受けた産品であることを示すための標章です。このマークは、登録された産品やその包装に使用できます。GIマークに類似した標章を、登録されていない産品に使用することは禁止されています。違反者には、農林水産大臣による標章の除去命令や刑事罰が科せられます。

GIマークのデザイン

GIマークのデザインは、富士山と水面をモチーフにしたもので、日本の国旗の色である赤や伝統的な金色が使用され、日本らしさを表現しています。このマークは農林水産省が商標権を保有しており、海外でも商標登録が進められています。

評価

地理的表示保護制度は、日本の地域農業の振興に貢献する一方で、欧米の制度とは異なる点も指摘されています。特に、登録後の管理体制や海外での保護については、改善の余地があるという意見もあります。しかし、この制度は日本の地域ブランドを保護し、国内外での競争力を高めるための重要な取り組みとして評価されています。

海外からの評価

中国メディアからは、日本の地理的表示制度は、欧米の制度と比較して管理が緩く、海外での商標乱用を防ぐことができないとの批判的な意見も出ています。しかし、地理的表示制度は日本の特産品を保護し、海外輸出を促進するための重要なツールとして、今後も活用が期待されます。

まとめ

地理的表示保護制度は、地域ブランドを保護し、生産者の利益と消費者の信頼を向上させるための重要な制度です。この制度を通じて、日本各地の特色ある農林水産物や食品の価値が高まり、より多くの消費者に届けられることが期待されます。

この制度を理解し、適切に活用することで、地域経済の活性化にもつながるでしょう。

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