特殊勤務手当

特殊勤務手当は、日本の公務員に支給される手当の一種で、その名の通り、通常の勤務とは異なる特殊な状況下での業務に対して支払われます。この手当は、職員が従事する勤務が著しく危険、不快、不健康、または困難である場合に、その特殊性を考慮して支給されるもので、俸給だけでは十分に報いることが難しいとされる業務を対象としています。

根拠法令

国家公務員の場合、特殊勤務手当は一般職の職員の給与に関する法律（給与法）第13条に基づいて支給されます。ここでいう「職員」とは、国家公務員法第2条に規定される一般職の職員を指します。具体的な支給要件や金額は、給与法第13条第2項に基づき、人事院規則9-30（以下「規則」）によって定められています。さらに、人事院の通達である「特殊勤務手当の運用について」（以下「給実甲通知」）が、規則の具体的な運用を詳細に規定しています。

特別職の職員に対する特殊勤務手当も別途定められていますが、支給額は概ね人事院規則と同等の水準となっています。地方公務員については、各地方自治体の条例が、独立行政法人については、各法人の長がそれぞれ支給に関する規定を設けています。

人事院規則に基づく特殊勤務手当の種類

規則では、各手当について、支給対象となる職員の範囲と勤務内容、支給額などが定められています。以下に、規則に定められている主な特殊勤務手当の種類をいくつか紹介します。

高所作業手当: 地上10メートル以上など、高所での作業に従事する職員に支給されます。
坑内作業手当: 坑内での作業に従事する職員に支給されます。
爆発物取扱等作業手当: 爆発物の取り扱いなど、危険な作業に従事する職員に支給されます。
水上等作業手当: 海上保安庁の職員が、水上での作業に従事した場合に支給されます。
航空手当: 航空機に搭乗し、一定の業務に従事する職員に支給されます。
死刑執行手当: 刑務官が死刑執行に関わる作業に従事した場合に支給されます。
死体処理手当: 警察官や検察事務官が、死体の収容や検視に従事した場合に支給されます。
防疫等作業手当: 病院や検疫所の職員が、感染症の防疫などに関わる業務に従事した場合に支給されます。
放射線取扱手当: 放射線を取り扱う業務に従事する職員に支給されます。
異常圧力内作業手当: 圧搾空気内や潜水作業など、異常な圧力下での作業に従事する職員に支給されます。
災害応急作業等手当: 災害発生時に、応急作業に従事する職員に支給されます。東日本大震災の際には、東京電力福島第一原子力発電所における作業に対して、特別な手当が支給されました。
極地観測手当: 南極地域観測に従事する職員に支給されます。
* 国際緊急援助等手当: 国際緊急援助隊の活動に参加する職員や、海外で邦人保護に従事する海上保安庁の職員に支給されます。

これらの他にも、夜間特殊業務手当、用地交渉等手当、鑑識作業手当など、様々な種類の特殊勤務手当が存在します。それぞれの業務内容に応じて、支給額や支給要件が細かく定められています。

支給方法と併給禁止

特殊勤務手当は、通常の給与と同様の方法で支給されます。支給にあたっては、各庁の長が特殊勤務実績簿や整理簿を作成し、適切な管理を行う必要があります。

規則第32条では、手当が支給されない場合や、複数の手当を併給できない場合について規定しています。例えば、ある手当の支給要件を満たしていても、他の手当の支給要件も満たしている場合、どちらか一方の手当しか支給されないことがあります。

東日本大震災における特例

東日本大震災の発生後、特に福島第一原子力発電所における作業に従事する職員に対しては、人事院規則9-129に基づき、特別な手当が支給されました。この特例では、通常の災害応急作業等手当に加えて、放射線被曝のリスクや作業の困難さを考慮した上で、1日あたり最大20,000円が加算されるなど、手厚い支援が行われました。

特殊勤務手当は、公務員の職務遂行を支える重要な制度の一つであり、その適切な運用が、国民の安全・安心な生活に貢献することに繋がります。

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