特殊車両通行許可

特殊車両通行許可制度：大型車の公道走行を支える制度

特殊車両通行許可（以下「特車」）は、道路法と車両制限令に基づき、大型特殊車両が公道を走行するために必要な許可です。車両の大きさや重さ、通行経路、走行条件などを厳格に定めた上で許可が下りる仕組みで、安全かつ円滑な交通の流れを維持するために重要な役割を果たしています。

許可申請の手続き

特車の許可申請は、通行経路を管理する道路管理者に対して行います。経路が複数の管理区域にまたがる場合は、いずれかの管理者に対して申請できます。申請には、車両の諸元（長さ、幅、高さ、重さ、軸重など）、通行経路図、通行経路表、車両の写真、旋回軌跡図など、多数の書類の提出が求められます。申請内容によっては、道路管理者から追加の資料提出を求められる場合もあります。

これらの書類を準備し、申請から許可証の発行までには、車両の大きさや道路管理者の協議の有無などによって数週間から数カ月かかる場合があり、迅速な手続きを必要とする事業者にとっては負担となる側面もあります。

許可が下りた場合でも、徐行運転や夜間走行などの条件が付される可能性があります。

制度の簡素化と新しい取り組み

2022年4月からは、特殊車両通行許可制度の簡素化を図るため、新しい制度「特殊車両通行確認」が導入されました。この制度では、事前に指定登録確認機関に登録した車両について、オンラインで起点と目的地を指定することで、通行可能な経路を即座に提示。ETC2.0搭載車両による通行と、ETC2.0や運送依頼書による重量確認によって、取締りが強化されています。

特車申請における手続きの簡素化や迅速化に向けた取り組みとしては、大型車誘導区間のみを通行する場合の申請期間短縮（最短3日）や、「特車ゴールド」サービスの開始があります。特車ゴールドは、業務支援用ETC2.0車載器を搭載した車両向けサービスで、許可更新の簡素化や経路選択の自由度向上に貢献しています。

自衛隊の特殊車両通行通知

自衛隊が車両制限令を超える車両を公道で使用する場合は、事前に道路管理者への通知が必要となります。民間企業の特車申請とは異なり、「申請」ではなく「通知」という点が特徴です。手続きは民間よりも簡略化されており、緊急時には電話での通知も可能です。

違反と罰則

許可を得ずに車両制限値を超える車両を通行させたり、許可条件に違反した場合には、道路法に基づき30万円以下の罰金が科せられます。また、道路管理者の措置命令に違反した場合も罰則が適用されます。しかしながら、実際には罰則が適用されるケースは少ないのが現状です。

制度を取り巻く課題

特殊車両通行許可制度は、自動車や通行に関する法令が複数存在し、所管官庁が分かれているため、一元的な管理が難しいという課題があります。警察、国土交通省自動車局、国土交通省道路局など、複数の機関が関与することで、手続きの複雑化や情報伝達の遅延につながっていると言えるでしょう。

さらに、制度の周知が不十分であることや、小規模事業者への浸透が遅れていることなども問題視されています。申請手続きの煩雑さや、違反した場合の罰則が軽微であることも、申請をためらう事業者が多い一因となっています。

今後の展望

国土交通省は、道路の保全や安全確保の観点から、この制度の周知徹底に努めています。しかしながら、情報伝達の遅れや、関係機関間の連携強化など、解決すべき課題も多く残されています。制度の簡素化やオンライン申請の普及、関係者への教育など、様々な取り組みを通して、より効率的で透明性の高い制度へと改善していくことが求められています。

通行許可が必要な主な車両

大型セミトレーラー、大型フルトレーラー、ポールトレーラー、ラフタークレーン車、連節バス、高速道路を走行する路線バスなどが、通行許可の対象となります。これらの車両は、その大きさや重さから、道路や橋梁への影響が大きいため、通行許可制度による管理が不可欠となっています。

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